越境的な演出 異次元フェスの照明演出とその他少々について

この記事は『異次元フェス アイドルマスターラブライブ!歌合戦』とラブライブサンシャインおよびラブライブスーパースターのアニメ本編のネタバレを含みます。先に視聴をしたい方はブラウザバックをお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みなさまお久しぶりです。まさけです。初めましての方は初めまして。照明演出おじさんです。

 

以前参加した Aqoursのバレンタインライブから約10ヶ月、師走に入って今年も残り数えるほどの日数を残すばかりとなりましたがいかがお過ごしでしょうか。私は異次元フェスで初めて聞いたジャングル☆パーティーが頭から離れず毎日ズンドコドンツクしております。

 

 

さて早速本題の照明演出に話を移しまして、今回の記事ではDay1のセトリから「AqoursのDreamy Colorとノクチルの今しかない瞬間の照明演出」について、そしてDay2のセトリからは「AqoursのWater Blue New Worldの照明演出とアイドルマスターのThank you!」と「シンデレラガールズのさよならアンドロメダとLiellaの私のシンフォニーの照明演出」について取り上げ、異次元フェスならではの越境的な演出を紹介できればと思います。

 

 

1. AqoursのDreamy Colorとノクチルの今しかない瞬間の照明演出

 

まずはDay1よりこちらの2曲を取り上げます。AqoursのDreamy Colorの照明演出で印象に残ったのはメインステージ上部のスポットライトの使い方です。下図のように上向きにスポットライトが光を出し、その光線が交点を結んでいる部分と放射状に広がる部分が作られていました。

 

ライブ中このスポットライトの向きは左右に動いており、下図で言うと一番左のスポットライトはやがて交点から離れます。それと同時に右のライトがまた交点に加わり、この光の交点はゆっくりと右へ運ばれていきます。

Dreamy Colorの照明

 

このように光が交点を結ぶ照明演出はAqoursの4thライブのThank you, Friends!で使われた演出を彷彿とさせます。Aqoursの曲で4thと同じ東京ドームという会場のせいもあるでしょう。

 

当時、Thank you, Friendsは3年生の卒業を扱った劇場版の告知直後に披露されました。曲中で光が集まっては離れていく様子は、高海千歌という一人の女の子からAqoursが結成される様子、そして卒業を迎えて各々の道へと旅立っていくメンバーの姿と重なりました。ライトが放射状に広がって交わらなくなっても、それぞれの光をライトの後ろまで延長すれば交点を結べる。それはスクールアイドルという活動が思い出になった時の彼女たちの姿と重なり、青春の儚さやかけがえのない思い出というテーマを思わせます。

 

今回東京ドームという会場でAqoursがこの照明演出を使ったという事実はラブライブのファンとして大いに感銘を受けました。しかしこの演出をAqoursだけで終わらせず、ノクチルの『今しかない瞬間を』の照明演出に同要素を含めたことは異次元フェスという場において素晴らしい演出計画でした。

 

今しかない瞬間をはセンターステージで披露されました。ここではメインステージのスポットライトも下図のようにセンターステージのキャストに集まっていました。

 

今しかない瞬間を メロ時のスポットライト

Dreamy colorでは光の交点をステージ上に作っていましたが、今しかない瞬間をの演出ではキャストの位置にこの交点を持ってきた形です。幼馴染4人で結成されたノクチルというグループでのこの演出は、高校生活での青春の時間を彷彿とさせるものでした。

 

曲が進んでサビに入る直前にはこのスポットライトは左右に広がりながら観客側へと動き下図のように展開します。

今しかない瞬間を サビ時のスポットライト

アイドル事務所に所属する彼女らにとって卒業がそのまま別れとなるわけではありませんが、高校生活には限りがあり、その時間が思い出に変わることに違いはありません。共に過ごす時間のかけがえなさを歌ったこの曲で青春の儚さを持った演出を取り入れることで曲の世界観がより重層的に表現され、魅力がさらに感じられました。

 

加えて今しかない瞬間をの照明ではスポットライトとは別にキャストの足元に光の模様を映していました。そしてライブ会場全体を見回すと、この足元とは別の模様が客席上部の天井にも2種類ほど映し出されていることに気が付きます。位置関係としては下図のようになります。

今しかない瞬間を 光の模様の投影位置


メロ部分を歌唱している時にはこのように天井とセンターステージの2箇所に分かれて映し出された模様ですが、サビへ移行するとこの足元の模様も図の「模様1」の位置へと移動します。キャストの位置から見れば模様1の部分に新たな模様が加わるように見えるわけです。

 

今という時間が思い出の1ページへ加わるようにも感じられるこの演出は、今しかない瞬間をという楽曲を表現するにあたってまさにぴったりの演出だと言えました。歌詞に寄り添って作り込まれた照明演出が先ほどの演出と合わさってさらに楽曲の魅力、世界観を引き出していたように感じられました。

 

スクールアイドルとノクチル、共通する属性や要素を持っているからこそできた演出面での越境的な試みがここに観て取れました。

 

 

2. Water Blue New Worldの照明演出とThank you!

 

続いてこちらではWater Blue New WorldとThank you!について取り上げます。

 

Day2終盤で披露されたThank you!をこの異次元フェスで初めて聞いて、曲のコンセプトに深く心を打たれました。アイドルとプロデューサーという関係だからこそある種対等な目線でお互いに感謝を伝え合うこの曲はアイドルマスターならではと感じましたし、この曲が今までのライブの中で幾度となく披露されその度にプロデューサーとアイドルの関係を強くしてきたんだろうと思いを馳せるだけでも、この曲に注がれてきた愛の大きさに言葉を失うようでした。

 

同時にこうして互いにありがとうを伝える曲がラブライブにないこと(少なくとも自分にはそう感じられること)を口惜しく思う部分もありました。

 

そんな中異次元フェスの照明演出を振り返っていた時、Water Blue New Worldの照明演出にThank you!的な要素が隠れていることに気がつきました。

 

Water Blue New Worldは1番、2番をメインステージで、間奏後のラストをセンターステージで披露しました。この曲の照明演出で印象的だったのはサビ直前の「Water blue」の歌唱部と同時に羽をイメージさせる青い小さな光がステージから客席側へ天井をなぞって向けられる部分でした。

 

サンシャインアニメ2期12話の最後で披露されるこの曲には、実際に映像の中で青い羽がステージから観客へと飛んでいく演出が入ります。そのため上記の青い光の演出はこの部分を再現するような意図で組み込まれたものと考えられました。

 

ですが曲の終盤、センターステージで最後のサビを歌う際に客席へと飛んでいった羽の光は、曲の終わりとともに再びセンターステージの真上に戻ってきます。また最後のサビではスポットライトの色も異なっており、1番2番が青だったのに対して最後のサビだけは白のライトが使われていました。この部分の演出だけは元のアニメ映像と照らし合わせただけでは説明がつきません。

 

ここで羽について少し考えると青の照明が青い羽なら白の照明は白の羽と捉えられます。μ'sからAqoursへと渡された、Aqoursの色に染まる前の羽です。可能性を感じさせる色の羽と言い換えても良いでしょう。

 

ラブライブというコンテンツから活力や創作ネタを供給されている私たちは、かつての高海千歌がそうだったように白い羽を受け取っているのだと思います。ファンとアイドルという関係性においてはプロデューサーとアイドルのような同僚的な関係性はなく、演者と観客のように分断された関係性があるばかりです。そう言った意味ではラブライブにおけるアイドルとファンの関係性は「アイドル→ファン」という一方向的な関係性だと感じられるでしょう。

 

しかしそれと同時に「ファンがいるからこそコンテンツが存続する」と伊波さんをはじめとしたキャストが繰り返すように、ファンとコンテンツは決して一方通行の関係ではありません。白い羽がセンターステージから客席へ飛び、客席からキャストへまた白い羽が返っていくのはそうした双方向な関係性を象徴的に示したものだろうと思われました。

 

Thank you!のような互いにありがとうを伝え合える曲はありませんが、演出によって双方向なメッセージを象徴的に表したこの演出にはアイマスとプロデューサー的な関係性をラブライブ的な表現に落とし込もうという試みのように思えます。そういう意味でこれもまた一つの越境的な要素だったと言えるでしょう。

 

 

3. さよならアンドロメダから私のSymphonyにかけての演出

 

最後にDay2よりさよならアンドロメダ、私のSymphonyの演出について話します。個人的にDay2の中で最も印象に残った2曲と言っても過言ではありません。

 

まずさよならアンドロメダの演出では天井部分にレーザーを用いて光の点を多く映し出し、さながらプラネタリウムのように星空を作り上げていたことは誰もが気がついたことでしょう。

 

さよならアンドロメダの照明演出はさほど主張は強くなく、むしろ曲をしっかり聴かせる演出計画になっていたと感じます。天井まで含めた会場全体を使った演出は観客を曲の世界観へと引き込み、多くの人がこれに聴き入ったことと思います。

 

そんな中、サビのパートでは天井の照明に少しだけ灯りが増え、レーザーに加えて細く絞ったスポットライトが星の海を彷徨うようにゆったりと動かされていました。その動きは何者かになろうと星々に手を伸ばす人や、自分だけの輝きを求めて彷徨い進む人の姿を連想させます。ライブの振り返りを一緒にしてくれたアイマスPの友人はこの曲が銀河鉄道に着想を得ていることに触れ、あの光は星々を渡る列車を想起させたとも言っていました。

 

サビの間のみ使われたスポットライトの光は少し暗めに抑えられており、色も複数使っていたのが印象的でした。これは歌詞の中の登場人物が複数いることに由来していると思われますが、全体的に光が弱く抑えられていることで歌詞の中に表れた寄り添うような優しさが綺麗に表現されているように感じました。

 

しかしこの曲の最後には、歌詞の中の主人公は再び一人に戻ります。照明演出でもこの点はしっかりと汲み取られ、最後のサビでのみスポットライトの光は1色に統一されます。複数色から1色へというシンプルな変化が、しっとりとした別れの印象を作り上げていたのは構成的にも美しい演出だったのではないでしょうか。またこのラスサビではスポットライトの光が少し明るくなっており、Pの友人はこれを最後の歌詞に表れた主人公の決意のようなものを表現しているように感じると言っています。そう思うと本当に曲に寄り添って作られた演出計画だと感じられます。

 

 

このさよならアンドロメダに続いたのが私のSymphonyでした。私のSymphonyはラブライブスーパースターのアニメ1期11話の挿入歌であり、このお話の中で主人公の澁谷かのんは「自身の過去」や「一人で人前で歌えない問題」と向き合います。過去に合唱祭で歌えなかった記憶、これはアニメ1話から言及され続けた根深い問題であり、これを克服するためにかのんは一人ステージの上で歌うことを余儀なくされます。

 

一人でステージに立つ不安を解消するシーンで、かのんは過去の自分もまたステージに立つことを恐怖していたことに気が付きます。そして幼い日の自分に寄り添い、語りかけ、そしてステージへと送り出します。さよならアンドロメダの歌詞に描かれた「寄り添い、送り出す人」のイメージがこの11話にも表れていたことが私のSymphonyを披露することで意識させられることがこのセトリの上手さだと感じました。

 

シンデレラガールズの面々とのコラボで歌われた私のSymphonyがキャストの越境のみに止まらず、物語や歌詞のイメージの越境も起こしていたのはセトリを含めた総合的な演出の手腕を感じます。

 

 

こうした物語の越境を踏まえて私のSymphonyの照明を振り返ると、その演出の中にも越境的な要素を見出すことができます。ステージ全体で見れば白色の照明が多く使われ明るい印象を作った構成でしたが、メインステージ上のスポットライト3本だけが青、ピンク、黄色の光を照らしていました。私にはこの3色がシンデレラガールズ渋谷凛島村卯月本田未央の3人を表しているように感じられました。嵐千砂都をはじめとしたLiellaの面々が澁谷かのんを支えたように、シンデレラガールズのアニメシリーズで中心的な人物として描かれたニュージェネレーションズの3人もまた互いに支え合い、時にはぶつかり、各々の問題を乗り越えていきました。

 

さよならアンドロメダの歌詞のイメージがラブライブスーパースター11話のイメージと共鳴したように、私のSymphonyの歌詞やLiellaの物語がアイマスのアイドルたちの物語と共鳴する。そうして今までとは異なる視点から曲を再解釈できるようにしたことにこの総合的な演出計画の妙が感じられました。

 

 

 

4. おわりに

 

以上、異次元フェスを終えて特に印象に残った越境的な演出を振り返ってみましたが、こうして文字に起こしてみると改めてその作り込みに感嘆を禁じ得ません。異次元フェスが終わった後もラブライブアイドルマスター双方のファンが互いのコンテンツに興味持って触れていることを見ても、このライブは大成功だったと感じます。

 

私個人としても今まであまり触れてこなかったアイドルマスターの楽曲に触れ、それをライブで楽しむ人に触れ、またラブライブとは異なった方向性での演出に触れることでサッと曲を聴くだけでは決して感じられない深みを垣間見ることができました。

 

正直最近のラブライブの展開はあまり追えておらず、ほとんど何もかもが初見の気持ちで臨んだライブでしたが、初めて聞いた曲も知っていた曲もしっかり楽しむことができました。ライブの振り返りに付き合ってくれた友人氏には改めてここでお礼を伝えます、本当にありがとう!Pならではの視点に加えて、作曲的な観点での話も聞けて非常に面白かったです!

 

 

最後に余談ですが、ラブライブサンシャインの1期サウンドトラックにも『今しかない瞬間を』というタイトルのサントラがあります。1期3話で使われた曲です。奇跡的な偶然ですね!

 

 

 

それでは今回の記事はこれにて終了。またライブの照明考察を書く時があったら、その時にお会いしましょう!最後まで読んでいただきありがとうございました!