久しぶりの照明レポ 〜AqoursのValentine's Dayライブに行ってきました〜

この記事はラブライブ!サンシャイン‼️ Aqours EXTRA LoveLive 2023 〜It`s α 無限大☆WORLD〜 Valentine's Day Concertのネタバレを含みます。ネタバレを踏みたくない方はブラウザバックを推奨します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてみなさん、大変お久しぶりです。初めましての方は(いるのか?)初めまして。

まさけです。

 

最後に書いた記事が去年のバレンタインデー、Aqours 6thの記事でしたので実に約1年ぶりの更新でございます。体感はもっと長いことライブに行っていないと思っていたので、ちょっとびっくりしました。開演前エンカしたフォロワーさんに「下手したら2,3年くらいライブ行ってないかも」なんて言ってしまって、図らずも話を盛ってしまったなと少々反省したくらいです。

 

ここ1年は二次創作に加えて一次創作にも手を出しまして、その忙しさに追われてライブ会場に足を運ぶことができていませんでした。くわえてLiellaがとても精力的にライブを行なっているおかげでタイムラインで目にするライブの情報は以前に比べて確実に増えています。そうした状況重なってもう長いことライブに行っていないという錯覚を生んだのかもしれませんね。

 

前置きはさておき、1年ぶりのライブで新曲の情報もあまり追えていない中、飛び入りで参加してどれだけライブを楽しめるのか少し不安もありました。ですが、いざライブが始まってみればその懸念はどこへやら、久しぶりの声出し解禁ということもあって3時間のライブはあっという間に過ぎていきました。

 

飛ぶように過ぎていった中で印象に残った演出をセットリスト順に振り返りつつ、ライブ全体の印象にも触れていけたら良いなと思います。

 

それでは参りましょう。

 

1. 待ってて愛のうた

一曲目の『少女以上の恋がしたい』に続く2曲目にまさか『待ってて愛のうた』が来るとは驚きました。個人的にはライブの中盤、ちょっと落ち着いてきたくらいの頃に歌われる印象を持っていたので、こんな序盤にこの曲を聞くのは新鮮味がありました。

 

『待ってて愛のうた』の普段の照明といえばやはり会場全体の色調が水色からオレンジ色に変わるところが印象的です。一番を水色で通し、二番から(あるいはそのサビから)オレンジ色に切り替える演出がよく用いられていますね。

 

水色の光は昼間の海の印象を、オレンジ色は夕日の差した海岸の印象を与えて、一曲を通して時間の流れを感じられるような演出。曲中でも印象的な「待っててくれるかい」というフレーズとこの光の演出が合わさることで、実際に答えを出してくれる時まで待ったような感覚さえ覚える、物語的な印象の演出です。

 

しかし今回のライブでは1コーラスの中で水色からオレンジに変わるという演出に変わっていました。メロ部分では水色を、サビ部分ではオレンジ色を使うことで、これまで1曲の長さを使って表現してきた時間の経過を1コーラスという短さに圧縮する演出、皆さんはここからどんなものを感じ取るでしょうか。私はこれが「思い出」や「記憶」のように感じられました。過去にあった体験を思い出す行為、それがたとえ昨日のことだとしても10年前のことだとしても、私たちはものの数分で過去の追体験を終えます。こうした時間の圧縮が今のAqoursにはあるのだとこの演出は言っているのではないか。少女だった彼女たちはそれぞれの経験を経てひとまわり成長した姿で今このステージに立っているのだと訴えかける力を感じました。

 

ガイシホールの1stライブ、あのステージに立っていた頃とは違う景色が見えると伊波杏樹さんはMCで語っていました。また逢田梨香子さんも新しいことに挑戦したかったとMCで語っていました。ライブをするということ自体が新しかったデビューまもないAqoursの面々とは対照的に、数多のステージを経験してきた今のAqoursの面々にとってライブをすること自体は「新しい体験」にはなり得ないのでしょう。ライブをする、歌や踊りを披露するという変わらないことがある一方で、新しい曲や新しい振り付けなど変わっていくものがある。これはまさにAqoursの歴史であり成長です。今までライブの中盤に披露しがちだった『待ってて愛のうた』を序盤で披露することも、照明の演出に目新しい変化を加えることも、この新しい挑戦の一環だったのではないでしょうか。

 

全く新しい演出に変わっていたら、きっとこんな感想は抱かなかったでしょう。それだけに、水色の照明がオレンジに変わるという「変わらないもの」を演出の中に残しているのは非常に粋な計らいだと感じました。

 

2. New Winding Road ~ さかなかなんだか?

続きましてはソロ曲パートから3年生曲の部分を取り上げましょう。各曲の演出も良かったですが、曲と曲をよりスムーズに繋ぐ視覚的な配慮も光るパートでした。

 

まずはNew Winding Roadから。

一曲の中で照明の色調が白→水色→オレンジ色→白と変わっていったことにお気づきになったでしょうか。加えてこの白のライトの調整が絶妙でした。蛍光灯のような白ではなく、若干の黄色やオレンジが混ざった白。より自然光に近い温かみのある白色のライトは朝日が昇る頃の空を思わせる色でした。そこから水色を経てオレンジへと変わる光、推測はやがて確信へ変わります。この照明は空の色であり、ひいてはその色が連想させる時間帯の比喩なのだろうと。

 

朝起きた時、昼食を黙々と食べる時、職場や学校からの帰り道。人がぼうっと物思いに耽ったり、取り留めのない考え事をしたりする時間帯がこの色には表れているんじゃないかと感じました。きっと歌詞のせいもあるでしょう。「目を閉じたらふとよぎる歌」「遠く離れて気がついたこと」「みんな元気でまた会えるように」こうした言葉の数々、そしてそれをノスタルジックに歌い上げる鈴木愛奈さんの歌唱力によって、ライブ会場には高校卒業後、あるいはその遥か未来で自分の目標に邁進する小原鞠莉の姿が見えた気がしました。目標に向かって突き進むその合間の休憩時間に旧友を思い、「元気でやっているかしら」なんて呟く姿もありありと浮かんできます。きっとAqoursメンバーで集まって同窓会をしたりするのでしょう。みんなで集まれないにしても、ダイヤさんを食事に誘って、そこの会話でルビィちゃんの近況を聞いたりするのでしょう。

 

この曲から見える情景は、なかなかメンバー全員での時間が取れなくなってきても一緒に同じ目標を追いかけた思い出を糧に日々を強く生きたり、次会った時も胸を張れるようにと努力を重ねていくAqoursの面々の姿です。「成長したAqours」という印象が強く焼き付けられました。

 

 

続いてWHITE FIRST LOVEについて。

まず『New Winding Road』の照明を白で締め括ったことで、同じく白色の照明を使うWHITE FIRST LOVEの視覚的な導入がとても綺麗にできています。白という色が演出上別の意味合いを持つとしても、ソロ曲を繋げていく構成のなかでライブ全体での一体感が強く感じられるつなぎでした。

 

『New Winding Road』では朝日の空を連想させた白色の照明ですが、『WHITE FIRST LOVE』では一転、雪を思わせる模様を会場の壁に描きながら使われていました。ちょうどステージの向かいの壁を見ていると上から雪の粒が降ってくるような光景になる瞬間もありました。

 

こうした白色のライトを使った雪の表現は決して初めてではありません。Saint Snowが関わったライブでは大きなミラーボールを使って降りしきる雪が表現されたこともありました。そして雪の演出はいつも一方向に流れる雪、空から降ってくる雪を眺めるような演出でした。我々が普段雪という現象に触れる時は上から降ってくることがほとんどでしょうから、照明で雪を表現する際にも上から降ってくるように見せることは理にかなっているでしょう。

 

しかし今回の雪の演出は、曲の大部分で雪の模様が縦横無尽に動いていたという点で過去の演出と大きく異なったと言えるでしょう。縦横無尽に動く雪とは、言い換えれば宙を舞う雪です。重力に逆らってまでそんな挙動をするとすれば、そこには強い乱気流のようなものが発生しているからなのでしょう。『WHITE FIRST LOVE』の白色照明は地上に降り立つよりももっと上空の、雪に吹き付ける乱気流を表現してみせました。

 

誰かに恋をして、その人の言動に一喜一憂する感情の揺れや、あるいはやっとの事で告白まで漕ぎ着けて、その返答を待っている間の永遠にも思える気持ちの乱高下をこの雪に託した演出は秀逸です。WHITE FIRST LOVEはもとより恋をした人がその想いを伝えようと思い立つまでが描かれた歌ですが、Valentine's Dayライブで披露され、乱気流に揉まれる雪が添えられることで、歌に描かれた物語の一歩先を見られたような気がしました。果たしてこの恋が実ったのか、その答えを知る由はありませんが、自分の気持ちを込めたチョコレートを渡して、相手の反応を伺うダイヤさんの表情がライブを通して浮かび上がってくる、そんな体験があるパフォーマンスだったと感じました。

 

 

最後に『さかなかなんだか?』について。

『WHITE FIRST LOVE』の時と同様、直前の曲の演出の要素を引き継ぐことで曲への没入感を高める工夫がここでも見られました。注目したいのは照明機材の動き。あるいはそれによって壁に映った光の動き。『さかなかなんだか?』のスポットライトは終始上下左右に自由に動き回ります。しかし今度はゆったりとしたスピードで。縦横無尽に空間を駆け抜けた雪の動きのスピードを落とすと、そこには水中の浮力を感じさせる自由な光の動きが現れるのです。

 

色調を変え、光の模様を変え、照明機材から放たれる光線の印象はだいぶ変わりますが、その動きを見てみれば直前の曲からスピードが落ちただけ。ただそれだけのことで空中の雪の浮遊感をそのまま水中の浮遊感に置き換える演出は技ありな表現だと感じました。

 

この「浮遊感」は『さかなかなんだか?』という曲を表現する上でも重要な要素になっています。踊るようなワルツのメロディに心を浮かされてついつい海の中を泳ぐような心地よさばかりが印象に残りがちですが、『軽くなるきっと 心は憂いは』という歌詞にも現れているように、この曲の楽しげな雰囲気の後ろには悩みを抱えた果南が隠されています。重たい気分を紛らわすために水と戯れる果南、その瞬間に彼女が感じている水中の浮遊感が、ゆったりと自由に動くエメラルドグリーンの光によく現れています。身体感覚な部分にアプローチする演出は果南らしさが出ているような気がしていいですよね。

 

しかし曲の最後に着目すると、果南は岸に上がるときに「でも心は軽くなってた」といって曲を締め括ります。落ち込んだ気分が気晴らしをすることで晴れていく体験、こうした緊張からの解放という要素は、『WHITE FIRST LOVE』からの転換に見た乱気流の動きから水中の浮遊感という印象の相転移に綺麗に反映されています。

 

3. DREAMY COLOR

DREAMY COLORの照明が印象に残っている人はあまり多くないかもしれません。照明の色は水色一色に統一され、動きもない。舞台のセットや大道具のように、キャストのパフォーマンスを見せるキャンバスの一部としてこの曲の照明は機能しています。照明単体で見た時の主張の少なさ、これがDREAMY COLORの照明の特徴だと感じました。

 

DREAMY COLORはバラードのようなゆったりした曲ではありませんから、スポットライトのような大きな照明を動かさないということはそれだけ余計な視覚情報を入れたくないという意思の表れです。「キャストを見ろ」という強いメッセージが沈黙の中に感じられる演出でした。

 

このようにキャストのパフォーマンスを見せる照明のあり方は、テレビの歌番組や大きなライブフェスなど、キャストのパフォーマンスを見せることに重点を置いたライブを思わせます。ライブという機会を考えるとこれは当たり前のことのようにも思えますが、ラブライブ!というコンテンツを考えると、これは照明演出における大きな転換があるように感じます。

 

ラブライブ!は(少なくとも一側面では)声優コンテンツであり、ステージ上で踊っているのもまた声優。彼女たちは役者であり、ライブという一つの演劇を作り上げるピースなのです。ライブで披露される楽曲の多くにはアニメーションPVやテレビアニメなどのストーリー的な背景があり、だからこそ照明の演出の中にもアニメのストーリーやキャラクター同士の関係性を思わせる演出が多々見られました。曲のメロディー、歌詞、キャストの歌声、振り付け、照明等の効果にステージの造形、そうしたライブを構成する全ての要素が絡み合って、Aqoursという一つの世界を表現するのがラブライブ!のライブでした。

 

しかしこのDREAMY COLORはどうでしょう。今ステージに立つ彼女たちこそがAqoursだと、そう語りかけてくるようではありませんか。あの瞬間、ステージに立つ9人は役者ではなく歌手なんだと説得されたような気持ちでした。ラブライブ!サンシャイン!!の節目となった5thライブを経て、PVをキャストが務めたDREAMY COLORでこうした演出がなされたことに、ラブライブ!というコンテンツが新しい展開へと確かな一歩を踏み出したことを感じました。

 

そんな新たな予感を裏付けるように、ほとんど動きのないDREAMY COLORの照明で唯一スポットライトが動いたのが、サビの部分でした。列車が動き出す瞬間の車輪のような、ゆっくりとした回転で回る光。非常に小さな動きですが、ライトを大振りで動かすよりもはるかに強く「始まるんだ」という歌詞を印象付けてくれました。

 

幻日のヨハネのTVアニメ化も告知されて、またあたらしいAqoursの物語が紡がれていきます。MCの中であったまだまだAqoursは止まらないというのも、単なるリップサービスではないのだろうと思える予感。まだ告知はされていないが、水面下でAqoursの新たな展開が胎動するこの予感こそが今回のライブがくれた贈り物です。

 

 

DREAMY COLORを振り返ってみたら意外といろいろ書けてしまいました。振り返ってみるとまた考えがまとまって、自分自身非常に楽しめましてハッピーです。上に書いた以外にも今回のライブは新しい挑戦がありましたね。BANZAI! digital trippersでのダンスパフォーマンスも圧巻の出来でした。あのクオリティに至るまで途方も無い努力を要しただろうと思いますが、それを乗り越えた姿を見ると、これからのAqoursの活躍にも期待が高まりますね。

 

今回はこの辺りで締めとしましょう。また現地のライブに参加することがあれば照明レポート書こうと思います。

 

それではまた会う日までお元気で!