Aqours 6thライブの印象的な照明演出を振り返る

この記事はAqours 6th LoveLive! ~KU-RU-KU-RU Rock 'n' Roll TOUR~のネタバレを含みます。2日目のアーカイブ公開も先送りになってしまいましたので、ネタバレ回避したい方はブラウザバック推奨です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆様お久しぶり(?)です。まさけです。R3BIRTHファンミの記事以来ですので、約1ヶ月ぶりとかでしょうか?

 

 ここ最近はもっぱら配信でライブを見ることが多かった私ですが、今回の6thライブはありがたいことに友人から連番のお誘いをいただきまして、久方ぶりの現地ライブと興じてまいりました。ライブが始まって真っ先に思ったのは「fps値が高い!!」だったので、自分がどれだけ配信という環境でライブを見てきたのかを少し思い知った気分です笑  1日目はアリーナ席でかなり前の方、2日目はステージに向かってほぼ正面の2階スタンド席、どちらも文句などつけようもない素晴らしい席でした。特にアリーナ席は私自身あまり経験がなかった上、初の最前ブロックでしたので「ついに私もキャストばかりを見る日が来たか?!」と思いました。もちろん実際には照明もがっちり見させてもらいましたが。

 

 実際初日はメインステージより低くステージにも近い席から実際にどんな照明が見えるのか私も確信が持てず、レーザーは見えない場合もあるかもしれないと思って参加したんですが、実際はそんなこともなくしっかりどんなレーザーが飛んでいるのかも見ることができました。そのため初日はステージの近くから、2日目は会場全体を見渡す視点からライブを楽しむことができました。

 

 さて、前置きはこのあたりにして本題の照明のお話に移りましょう。6thライブで嬉しかったことの一つとして、ライブ後の照明ツイートの多さが今までと段違いに多かったことが挙げられます。単純に私が見逃しているだけの可能性もありますが、私が照明について書き始めた頃からかなり増えたような気がしました。うれしいことだなぁと思いつつTLを眺めていますと、多くの人がMisty Frosty Loveの照明の話をしているようでした。読者の方もお気づきだったかもしれませんが、Misty Frosty Loveの照明は曲の一部を除いてずっと上手が桜色、下手が水色で二分されている構成になっていました。「誰かとあなたと私」という三角関係や斉藤朱夏さんと逢田梨香子さんがすれ違う印象的な振り付けもあって、この二分された照明演出が「誰か」と「私」の間にある心理的な隔たりを強く印象付けたのです。それゆえにこの照明演出に言及する方が多かったのでしょう。配信で見ていた方に(おそらく配信に乗らなかったであろう)現地の照明情報を追加しますと、この曲中で使われていたゴボ(光の模様)の中に5thのNext Sparkling!で使用されていたのと同じものがありました。サビのところでうっすら見える程度に使われていたのこの模様は、5thライブでは劇場版のテーマでもあった「卒業」を表現するために使われていたものでしたが、これを見て私はMisty Frosty Loveでも卒業がうっすらと影を落としているのかもしれないと考えたりしていました。つまり、この曲を単純にようちかとちかりこという二つのカップリングの狭間のような情景だと捉えると、卒業を機に曜ちゃんと梨子ちゃんがすれ違ったままになってしまう世界線があるのかもしれないと。そんな妄想が捗る演出でした。

 

 このMisty Frosty Loveの照明が印象に残った方にはぜひ涙が雪になる前にの照明演出にも着目していただきたいです。歌詞の方向性はMisty Frosty Loveと異なりますが、この曲もまたすれ違いという「二人の間に隔たりがある状態」を一つのテーマとしています。Misty Frosty Loveの隔たりが左右で表現されたとすれば、涙が雪になる前にの隔たりは前後で表現されたと言えるかと思います。メインステージを中心に会場全体の色調はヴァイオレットに調整されていた一方、レーザーや一部のスポットライトなど、ステージから客席側へ照射されていた光はエメラルドグリーンに調光されていました。立体的に見れば光は交差しているものの光の向いている角度が違う、まさにすれ違っている様が演出されていました。ただ、Misty Frosty Loveと涙が雪になる前にの違いは、前者が曲のラストの振り付けですれ違ったままであるのに対し後者は果南が鞠莉を抱き止めて終わります。すれ違いが解消されるこのエンディングと平行を成すように、会場はヴァイオレット一色になり、客席側へ照射されていたエメラルドグリーンの色はオフになっていました。

 

 2つだった色が1つになったというのはいくつか解釈の余地がありますが、振り付けへかなり寄せるのであれば「2つが1つになった」とシンプルに捉えることができるでしょう。鞠莉の色だけを残していったのは別の色を使うと浮いてしまうなどの理由が考えられます。そのほか、この歌はそもそも鞠莉の回想であると捉えることもできるでしょう。冬になって自室で過去を振り返っている鞠莉自身が1期9話未熟DREAMERで描かれた果南との仲直りのことを思い出している場面のように捉えることもできるでしょう。そのように考えれば、曲の最後でヴァイオレット一色に染まったのは回想が終わり再びシーンが自室の鞠莉に戻ったと考えることもできますね。歌詞自体のフォーカスは「白い雪が二人の方に降る」というところから冬も含んでいると考えれば、鞠莉は日中は果南とどこかへ出掛けていたのかもしれない、など多分に想像が広がりますね!

 

 ライブ後のTLで照明関連のツイートを見ていてもうひとつ多かったのが、涙×のラストサビ前でステージの照明が一気に落ちて、ミラーボールに反射した光がドーム一面に広がり星空を見上げるような空間を作っていた点です。涙×は過去を振りかえって未来を思い描く歌ですが、さながら卒業ソングのような歌ですよね。Misty Frosty Loveの際に触れたゴボが使われていないこの曲ですが、きっと多くの人がこの曲に感傷を抱いたことだろうと思います。曲中に差し込まれた星空に、あるいは配信でそれが映らなくとも一気に暗くなった会場に、読者の皆様はどのような想像を働かせたでしょうか?私はテレビアニメ2期10話「シャイニーを探して」の中で、Aqoursの9人が見た景色はこんな風だったのかもしれないと思いました。母校の統廃合が決定され旅立ちを余儀なくされた彼女たちは、卒業とは別でありながらどこか共通するような感情持っていたのではないでしょうか。土肥駐車場から見上げた満天の星空のなかで彼女たちが考えていたもの、そしてAqoursのメンバーひとりひとりが自身の卒業を目前に考えていたもの、その二つにはきっと共通点があるのだろうと考えたりしていました。

 

 星空の演出は涙×の演出の中でかなり印象的な位置を占めていますが、この曲は他の部分にもしっかりと見所がありました。短くまとめると、涙×は1番と2番以降でサビの照明演出が異なります。AメロBメロを白一色の照明で貫いて始まったこの曲は1番のサビに差し掛かってようやくメンバーカラー9色を用いた照明へと展開されます。この9色はスポットライトであったり、レーザーであったりさまざまなところに表れていましたが、白から9色へと移る進行は光の分離を思わせます。光というのは加法混色をしますので、混ぜれば混ぜるほどその色は白へと近づいていきます。なので白という色は9人全ての色を混ぜて一つにしたもの、グループとしてのメンバー9人を象徴する色の一つだと言えます。その白がメンバーカラー9色へと分化していく、その過程はまさにグループのメンバーひとりひとりが自分たちの道を歩んでいく「卒業」と重なります。過ぎた日々を抱きしめて今度は何がしたい?そう問いかける1番の歌詞は9色の光に彩られることで、卒業を目前に自分が歩んできた道、これから歩む道に思いを馳せる彼女たちの表現へと昇華されていきます。一方2番ではメロからサビを通して常に白一色で演出が進行します。9色へ分かれた1番を経てたどり着いた2番の歌詞の中でグループとしてのAqoursが占める位置、それは各々が大学、社会と時を進めてなお決して褪せることなく記憶の中で輝く「思い出」なのではないでしょうか。過ぎた日々は還らない、二度とはこないからこそ愛おしい。そしてこころがひとつになった時代を忘れないでとつぶやくのは、それが大切な思い出だからなのでしょう。2015年2月26日のプロジェクト開始からもうすぐ7周年を数えるAqoursだからこそ、この時間の重みが実感として感じられる演出だったのではないでしょうか。

 

 最後にWATER BLUE NEW WORLDとMIRAI TICKETについて少しだけ。Aqours 6thライブはこの2曲が同日に披露された初めてのライブとなりました。WATER BLUE NEW WORLDは水色一色を貫いた照明演出に、MIRAI TICKETは時折白色の照明を交えつつもメンバーカラー9色を活かした構成で披露されていました。どちらもかなり久しぶりに見たので、私は当初WATER BLUE NEW WORLDの照明配色がMIRAI TICKETのものに、そしてMIRAI TICKETの配色はWATER BLUE NEW WORLDのものに変わっていると勘違いすらしてました。(勘違いではあったものの私個人はめちゃくちゃ盛り上がってましたけどね笑)ただ改めて過去の映像を確認してみるとそんなことは全然ありませんでした。その勘違いを正してなお、この二曲の関係には涙×に見られたような、グループのメンバーがそれぞれの道へ進んでいくモチーフは見て取れるように思います。

 

 アニメの時系列で見ればMIRAI TICKETが先に来るべきところを、今回のライブではWATER BLUE NEW WORLDが先に披露されました。この曲で使われている水色は、白とは別のもう一つのAqoursのカラーです。OCEAN STAGEというサブタイトルに相応しい「恋になりたいAQUARIUM」からほぼ水色一色に染まった会場を引き継いだこの曲は水色一色の照明演出でAqoursがたどり着いた一つの終着点を想起させます。廃校が決まった浦の星の名をラブライブ優勝の歴史の碑に刻むこと、これがテレビアニメ2期の大きな目的の一つであり、Aqoursがたどり着いた一つの結末であると言えるでしょう。しかし、知っての通りAqoursの物語はこの後も劇場版へと続きます。3年生が卒業した後のAqoursはどうするのか?劇場版で扱われたこの問題はアニメ作品の枠にとどまりません。5thライブ以降、Aqoursは常にこの問いを投げかけられてきたように思います。先行するアニメ作品やストーリーとの同期をめざすパフォーマンスのあり方から、2次元のAqoursと3次元のAqoursが足並みを揃えて進むコンテンツへの転換。言い換えればアニメーションPV付きのシングル等で楽曲が発表され、書籍等で物語が提示されるスタイルへの転換。故にWATER BLUE NEW WORLDは過去のAqoursのあり方の象徴であり、先に演じられるべき思い出の曲なのでしょう。一方この転換は見方を変えれば過去への回帰でもあります。そもそもラブライブというプロジェクトが、μ'sというグループが電撃G'sマガジンで始まった時、企画はこのような形でした。そうして未来を切り拓いていく、Aqoursはまさに今次世代のμ'sへと変貌を遂げようとしているのかもしれません。故にMIRAI TICKETは後から披露されるべき曲なのでしょう。プロジェクトとしては過去への回帰でありながら、グループとしては未来へと続く確かな一歩である。グループとしての一体感よりキャラクター各々の個性が花開き輝くような未来を予感させる9色の光がMIRAI TICKETにはあったのかもしれません。

 

 5thライブ以降繰り返される新たな輝きを求める姿、次のステージへと進もうとする姿。私は今までこれらを見て、Aqoursのメンバーもやがてμ'sのメンバーのように各々の道へと邁進していくことを暗示しているのだろうと思いました。それは喜ばしいことであり、私はファンとしてそれを笑顔で見送るべきなのだろうと。かつて矢澤にこが言ったように、アイドルとはメンバーが変わってもグループが残っていくもの。ラブライブという企画もまた、グループが入れ替わっても企画が残っていくのだと。ただ、今回のライブを見て、今照明考察を書いて、ラブライブはそうではない道を模索しているのかもしれないという発想を得ました。応援していたメンバーが企画を去っていくときに感じるであろう喪失感とどう向き合おうか考えあぐねていましたが、それは少し取り越し苦労に終わるかもと思うと、若干気が軽くなる思いもしますね。

 

 最後は少ししんみりとしてしまいました。考察記事もまた生き物で、書きながら思索を巡らすうちに新たな気づきや発見があるものですね。照明に関するツイートが多く見られて嬉しかったのは紛れもない事実です。この記事が皆様の気づきや発見の一助となれば、私も嬉しい限りです。またライブに行ったら記事を書くかと思います。その時は是非、まだいらしていただけましたら嬉しいです。

 

 それではまた次の記事でお会いしましょう。