音で沼津を照らしたい、その照明に心を照らされたわたし

 皆さまお久しぶりです。まさけです。初めましての方は、お初にお目にかかります、まさけと申します。

 

 5thライブの3週間後に意地と根性で照明ブログを書き上げてから早3ヶ月といったところででしょうか、皆様いかがお過ごしだったでしょうか?私はと言いますと、あの後ライブブルーレイで楽しむ照明演出企画を形にするべく、視聴動画を漁ってちゃんと引きの画が映っているかとか、引きと寄りの割合はどうかとか、寄りの時に照明機材が映り込むことは頻繁にあるアングルで撮られているかとかを検証しておりました。その甲斐あって実際ある程度なら照明演出楽しめるじゃないかということで、Blu-rayも入手してなんとか9月初旬開催の僕ラブに間に合わせる事が出来ました。正直自己満本もいいとこだったので売れるわけないとタカをくくっていたのですが、予想以上の反響をいただいてイベント会場では印刷分全て完売という奇跡に巡り会わせていただきました。感想もちょくちょくいただいて嬉しい限りです。もしこちらの本にご興味のある方は右のURLで通販を承っておりますので、ぜひご利用ください↓↓↓

twilightrobe.booth.pm

 

 

 

 さて近況報告はこの辺にしておきまして、本題の音で沼津を照らしたいの第4回公演へと話を移しましょう。音で沼津を照らしたい(通称おとぬま)はラブライブ!サンシャイン!!曲のインストアレンジを中心に沼津で開催される有志の音楽イベントです。詳しい来歴についてはお恥ずかしながら存じ上げませんが、その評判の高さを以前より私も耳にしていました。しかし足を運ぶ機会に恵まれず、今回4回目の公演にして初の参戦となった次第です。4回目の公演を知ったのもこの公演で技術監督と照明を担当されていたまつばらさんのツイートを偶然目にしたことがきっかけでしたし、足を運ぶことができたのも偶然バイトが入っていなかったからなので、偶然が重なっての巡り合わせって本当にあるんだなあとしみじみ思いました。

 

 肝心のライブパフォーマンスも非常にレベルが高かったです。まず出演者の方々が総じて演奏が上手い。音楽はかじった程度なので耳は肥えていないかも知れませんが、私は大満足でした。また大人数でのパフォーマンスにもかかわらずしっかりと音もあっていましたし、音量のバランスもしっかりと調整されていました。PAさん本当におつかれさまです。おかげさまでこちらも我を忘れて楽しむことができました。ライブ自体も複数の部に分けられていて、幕間の映像も用意するなど音楽パフォーマンスだけでなくライブを構成する細部にもしっかりと気が配られていて芸が細かかったです。「鯖は飲み物」のハッシュタグ、機会を作って使わせていただきます笑

 

 そして大本命の照明!!ここが本命なのも少し変かもしれませんが、正直度肝を抜かれました。じっくりと語っていくとしましょう。ここからは機材紹介をした上で、Dropout!を中心に印象に残った照明演出を紹介します。

 

機材紹介

 

まずは会場の特徴から。今回の会場は沼津市民文化センターの大ホール。収容人数1516人の大きな会場でした。演劇用にも使われる舞台ということでサスペンションライトがある!!!驚きとともにテンションが上がる!!!これは照明本を書く過程あってこその驚きなんですが、そもそもライブ会場に普通のサスペンションライトは映像を見る限りでは持ち込まないみたいなんですね。これはよくよく考えると当然で、搬入できる機材量が有限である以上動かしたり色変えたりできないサスペンションライトはコスパ悪いんですよね。その点今回は会場にこのライトがあったのでスクールアイドルの地元ライブ感高くてテンション上がるな!!!と一人で高まっておりました。使い方もしっかり考えられていて、ステージ上の演者を照らすだけでなく観客のレスに合わせて光らせることもしていました。Awaken the Powerではアニメ映像中の花火のようにイントロに合わせて光らせる場面もあり、まるでAqoursのライブの時のように「わかりみ~~!!!」と声を上げてしまいました。

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参考画像:サスペンションライト

 

 サスペンションライトの他にコロガシみたいなライトが客席に向けて設置されていたのも印象的でした。コロガシとはフットスポットライトとも呼ばれ、床にそのまま置いて使うタイプのスポットライトのようなものです。高さが全然ないので床の上にライト本体を直置きしているみたいな見え方をしますね。演者を照らすサスペンションライトとは対照的に、こちらは綺麗な逆光を作ってくれるライトでした。サスペンションの光を落としてコロガシを入れると明暗のコントラスト強くついて画面が引き締まります。全体の光量を上げるのにも使われていましたし、こちらもサスペンションライト同様Awaken the powerの花火演出にも使われていました。

 

 さて舞台用照明機材にとどまらないのがおとぬまのすごいところ。しっかりとムービングライトも設置されていました。ムービングライトはライブハウスでも置いてないところにはないので、大きめの音楽ライブに来た感が高まりますね!!私の席から見えた感じだとステージの前方上部、客席からも見える位置に1列と、客席からは見えないステージ中央あるいは後方にもう1列配置されていたように見えました。こちらのライトはLEDを使用したウォッシュライトのタイプだったかなと思います(下は参考画像なので機種は異なるかもしれません)。光の色を変えることができるので会場の雰囲気づくりが得意な子ですが、光を点滅させたり向きを変えたりと多彩な演出に使えるのが良いところですね。ドームなどの大きな会場でメインに使われるムービングスポットライトと違い光線を出すのが得意なわけではないウォッシュライトですが、おとぬまでは白や黄色といった高光量の色では光線がうっすらと見えていました。

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参考画像:ウォッシュライト

 上記の他にストロボとレーザーも使用されていました。この二つは使用法を誤ると体調不良や健康被害に繋がるので気をつけなければいけませんが、その分上記のライトではできない特徴的な演出が可能になるのがいいですね。今回のおとぬまで心残りなところはスモークを焚いていない関係でこのレーザーがほとんど見えなかったところでしょうか。私のように演奏中に後ろを振り向くならまだしも、ステージを見続けていた方からすると両脇でなんか光ってるなくらいにしか見えなかったかなと思います。レーザーに限らずライブの照明機材の光は指向性が強くあまり拡散しないので、スモークを焚くことでこれを光線として見える形にできるのですが、スモーク量の調節が難しい、機材が手に入らない、あるいは会場・演者の事情により使用できないといった背景があったのかなと思います。Aqoursに限らずですが、ライブは多くのプロフェッショナルの仕事の上に成り立っているんだなと改めて実感できますね!

 

さてこれで機材紹介はおしまいです。次は印象に残った演出をかいつまみつつ、DROPOUT!?の照明演出を語りましょう!

 

楽曲中での照明演出

 さてお待ちかねの楽曲中での照明演出です。ライブ全体を通しては2部くらいまでの前半はサスペンションライト、コロガシ、向きを固定したムービングライトの3つで照明を回していたなと思います。私自身、前半部を見ていた時にはせっかくムービングライトがあるのに全然動かさないしもったいないなあと思っていたんですが、後述のDROPOUT!?から使ってる照明機材は増えるし使い方も種類が増えるしで最高でした。これは本家のAqoursのライブでも同様でして、ライブが進むにつれて予想もしなかった照明演出が出てきて楽しくなるんですよね。この辺りも意識していたのかはわかりませんが、ものすごい再現度でした!

 

 印象に残ったというかわかりみが深かった照明演出としては、まずBrightest Melodyのサビ直前でコロガシをゆっくりとつけていく朝日の演出ですね。1番サビではこれが行われなかったので「朝日演出ないの?ないの?」ってなってたんですが、2番サビに入るところでこの演出が飛び込んできて「それな〜〜〜〜!!!!!!」ってなってしまいました。焦らしプレイとは意地が悪いですね笑 このコロガシはサビ中光ったままなんですが、ステージ後方のムービングライトの色が紫がかった白から水色へと変わったのもよかったですね。「夜明けから朝になったじゃん!!!」と心の中で思いました。スモークがないためライトが反射する床の色だけが変わって見えるんですが、これが海面のイメージに繋がったのもよかったです。沼津といえば海だしね、Aqoursの物語にも海は欠かせないよねということで深く印象に残っています。

 

 海といえば波ですが、レーザーを波型に展開する演出もされていました。「卒業ですね」をはじめとしていくつかの曲で使われていたんですが、これは後ろの壁に当たったレーザーの光を元に判断しました。波型のレーザー光といえば5thで使われていましたね。Over the Next RainbowかNext Sparkling!!のどちらかだったような気がしますが、当時見た景色を思い出すようでした。正直レーザーの光自体が見えていなくても壁に当たった波状の光が重なる様子はそれ自体がとても美しいんですよね。ちょうど曲も5thでやった曲だったので、「5thのメットライフドームで壁面に映ったレーザーの光を見ながら『めっちゃ波じゃん、劇場版冒頭へのさりげない言及じゃん。なんなら閉校祭の回で波がAqoursの文字を消す演出と劇場版ラストで波の先にAqoursの文字が残ってる演出も意識に上るじゃん、バケモンかよ!!!!!!』と思っていた人が私の他にいたなんて、キセキだよ!!!!」と思っていました。同類がいるって嬉しいですね。え?ひどい妄想だって??知ってますよ!!!!!!!(血涙)

 

 ちなみに「卒業ですね」のレーザー演出は海の波模様のレーザーに留まっていませんでした。同じ波線のモチーフを使っていても、波の幅と高さを小さくした波線を使ってそれを伸び縮みさせるように動かしたり、幅を抑えつつ高さを出した波線をちょうど海を泳ぐウミヘビのように動かしたりと、正直言葉では説明し難い動きをいくつもさせていました。このレーザー演出は5thの時の演出とかなり似ていたように思います。とはいっても5thの卒業ですねの照明の記憶はかなり曖昧なのでなんともいえないんですが…。「5thのレーザーもこんな感じの不思議な動きしてたな」という感情を喚起されてただただ脱帽といった感じでした。

 

 このように後半では照明機材の種類や使い方に工夫を凝らしたものが多く大満足だったんですが、この後半の皮切りとなったのがDROPOUT!?でした。幕間が終わって函館のユニットカーニバルを彷彿とさせる映像がスクリーンに映り、同時にSelf Controlのインスト(?)の音源がうっすらと流れて「まさか?」となりながら始まった3部ですね。この映像自体めちゃくちゃ出来が良くてVJグッジョブ!!!!と心で叫んでいました。導入部ですでに高まり切った頭をスッとなでるような滑らかなピアノとそこにぶち込まれる重く歪んだギターの旋律で完全に心を持って行かれました。そしてドラムの入りと同時に高速で点滅する白に統一されたムービングライト。それまで画一的に揃っていたムービングライトの向きがここにきて一つ一つが別の方向を向いていました。それが高速で点滅することで光が無差別にいろんな方向へと飛んでいる印象を作り出していました。白色光のため光線がスモークなしでも光線がうっすらと見えたのもよかったです。光線の直線的な外見と明暗の強いコントラストが曲のハードさを、点滅の速さがビートの速さを、そして色々な方向へと飛ぶ光が曲の暴力的なまでの躍動感を演出していました。サビの直前ではストロボも使用されて、白と黒のコントラストがより強烈に印象付けられていました。DROPOUT!?という曲のハードな印象を光の色調、方向、強弱の3モードを使って非常に綺麗に演出していました。これは本家顔負けといってもいいでしょう。

 こうしたハードな演出が曲に私を引き込んでくれたおかげで、この曲のハードさを受け入れつつ曲の背景に意識を伸ばすことができました。激しく点滅し光を撒き続けるムービングライトから感じるのは鹿角理亞の激情という印象。その激情の正体とはなんなのか?優勝候補とまでいわれたSaint Snowが予選敗退という結果に終わってしまい、その責任を強く感じている理亞、この姿はアニメだけでなく劇場版でも色濃く描かれていきます。DROPOUT!?という曲はそのタイトルからも敗退という結果を意識した曲。この敗退という結果をうけて理亞は後悔と自責の念に苛まれたことでしょう。敗退の瞬間まで信じ続けた自身の行動とそれを打ち砕く敗退という事実。誰しも自分が間違っていたと認めるのは難しいものですから、自尊心を守ることは人間の行動原理の一つと言えるでしょう。この時の理亞もまた敗北という事実による自尊心への脅威を感じていたはずです。しかしそれと同時に尊敬する姉の最後の晴れ舞台に泥を塗ってしまったという罪悪感にもあったはずです。自分を肯定したいという気持ちと姉への強い罪悪感、どちらも理亞の正直な感情だからこそこの二つの感情の衝突はやり場のない苛立ちとして理亞に現れたのではないでしょうか。このやり場のない苛立ちこそが理亞の激情の正体、激しくのたうつ光線の中に私が見出した意味なのだろうと気づかされました。曲を楽しむのと同時に頭がフル回転してそれまで見えなかった景色が見える、照明演出を考えていて一番楽しい瞬間です。

 

 CDの音源を聞いているだけでは至れなかった「曲が伝わる」の瞬間をもたらしてくれたおとぬま照明担当のまつばらさんとさとるさん、本当に素敵な時間をありがとうございました!!!!!!!!!!!関わったスタッフさんの名前がわかるって嬉しいですね!!!!!

 

 ここに書いた以外にも照明たくさん働いていました。いまパッと思い出したところですと、スタッフロールでスタッフさんとspecial thanksが流れた後、and youの文字が画面に出たところでコロガシを使って客席にライトを当てるとか、細やかながらメッセージ性に富んだ演出がなされています。しかし悲しいかな今回はメモを取っていない、高まった頭から印象的な照明演出が飛んでいってしまいました。

 

 最後に、おとぬま次回があるならまた絶対行こうと思いました!!照明演出だけとっても、次はこんな風な動きもできるようになってるかもとか、ゴボが導入されたらこんな演出できそうとかたくさん楽しんで鑑賞できました。また照明演出だけでなく、VJさんの映像も素晴らしかった。僕らの走ってきた道はの部分で冒頭に無人のホールから映像を始めたり、幕が開く映像を差し込んでいたりしてこだわりを感じましたし、Believe againの雪の結晶模様の鬼の再現度…。ライブを通してクオリティがとても高かったです。改めて素敵な時間をありがとうございました!!!!!!