ダイスキだったらダイジョウブの照明演出のバランス感がとても良いというお話

お久しぶりです、初めましての方はお初にお目にかかります。まさけです。

 

 照明演出のお話をするというニッチな目的でこのブログを開設したわけですが、そもそも「ライブがないことには照明演出を語ることができない!!」ということでどうしても更新をしないまま長い時間が過ぎる命運を背負ってしまいました。

 アジアツアーは台北公演を新宿のLVで見ていたのですが、LVで照明演出をみるのはかなり骨が折れました。当然ですが基本的にカメラさんがキャストの方々を抜いていくので照明演出を見ようと思ってもライトがどう動いているかとかはあまり見えないんですよね。結果、自分が以前見た照明演出やら画面の端に映るライトの動きやら曲調やらを考慮して照明装置の動きを事前に予想(そして一瞬引きで映った時には確認)したり、画面の端に映り込んだ床に当たった光の色を確認したりと現地の数倍頭を使ったのにあまり成果が得られない内容となってしまいました。とはいえ普段よりもたくさんキャストさんを見られたのでその部分はLVのいいところだなと思います笑

 しかし照明演出をより親しみやすいものにできるようにとこのブログを開設したわけですし、できることならもっと更新頻度をあげられればなあと考えています。そこで現在Blu-ray映像で照明演出を見られないか画策中でございます(需要あんのかこれ)。できた暁には同人誌にでもしようと思うので興味のある方は続報をお待ちください!

 

 

 さて本日はアジアツアーの3ヶ所目、TOKYO公演を友達の連番のおかげで現地参戦してきたわけですが、今回も素晴らしい照明演出が各所に見られて大満足でした。本題のダイスキだったらダイジョウブに入る前に、夢で夜空を照らしたいの照明についてすこしだけ…。なんといっても配色がとてもよかった。アニメ映像では夜から朝焼けへと移り変わる空の色が背景に広がったりそこに浮かぶランタンがとても綺麗な曲ですが、照明ではその夜空と朝焼けの空が見事に表現されていました。ステージ上に設置した固定のライトから青の光をメインで当てることで全体的に落ち着いた夜の色調を作り出し、そこにステージ前方からオレンジ色のライトを重ねて当てることで少し紫がかった色に調整していました。これが夜から朝方にかけての空の色となっていて曲の世界観への移入を促していましたね。私はこの演出を見た時「これがかつて清少納言枕草子に記した、夜明けの紫がかった空なのか」とその美しさに感動しました。また青だけでは光量が足りないので会場後方のスポットライトでキャストを照らして、ステージ真上のライトもオレンジ色にした光を弱く当てることで明る過ぎずしかしキャストがしっかりと観客から見えるように明るさが調整されていました。色調と光量の二つの側面から曲の雰囲気をしっかり形作った上で見やすさにもしっかりと配慮しているところはまさにプロの仕事だなと感じます。

 またライトの動かし方もゆったり左右に揺らす動きを基調に光の模様を会場の壁や天井に投影して回すなどBPMの低い曲調に寄せながら単調にならないように気が配られており仕事の細かさが伺えます。ちなみにサビの時後ろを振り向くと後方の壁面にはピンク色の光の点を四角に並べた光がいくつも並んでいてそれが回っていたのですが、その光景が朝焼けの海を写真に撮った時の水面のきらめきやフレアのようでこちらもまた非常に美しかった。演奏中後ろを振り向くことはあまりないとは思いますが、あくまでも会場全体を装飾している照明さんの仕事は観客だけでなくAqoursのキャストの皆さんにもまた綺麗な光景を見せているんですね。

 このほかにもミライチケットで下から前へ手をあげる振り付けに合わせてステージ上真上のサステインライトを一斉に下から前に飛ばしたり、未熟ドリーマーでは観客のコールを促す時に使う大光量のライトを使って花火の光を表現したりと曲への没入感を強める演出がなされていました。想いよひとつになれでも何かものすごくエモい演出があったような気がするんですが、とてもエモかったことだけが記憶に残って何がエモかったのかさっぱり忘れてしまいましたw やっぱメモ取るのは必須かもしれませんね笑

 

 上に書いた以外にもたくさんいい光の演出はあったんですが、そろそろ本題の「ダイスキだったらダイジョウブ」に移るとしましょう。ダイダイの照明の良さを一言で表すのなら、「素人感を適度に演出できるプロのバランス感覚」とまとめることができます。

 まずダイダイではどのような照明演出がなされていたかを振り返っていきましょう。アニメで放送された楽曲ということもあって全体的な色調は白熱球の色を基調に明るすぎないように調整されていました。会場後方からスポットライトでキャストさんを照らすことによってステージの照明を使わなくとも光量的に十分な見易さを確保していました。ちなみに稼働していたスポットライトは6本だったので一人につき2本ず当たっていたと思います。この後ろからスポットライトで照らしている様子は1期3話のむつといつきを思わせました。(本数は違いますが笑)こういうところでめちゃくちゃエモいと思っちゃうんですよね。

 さて固定ライトとスポットライトでキャストが十分に見える光量を確保できているのでステージ周りの動かせるライトを演出に使う準備が整いました。サステインライトやステージ上の可動ライトは蜜柑色、水色、桜色の3色を切り替えながら四方八方に光を飛ばして、ステージ上にいるキャラクターに寄せた演出となっていました。メンバーカラーに照明を揃えるのはまさに王道の演出、実家のような安心感を与えつつ動きのある伴奏にも対応できる照明パターンをここに持ってくるのは伴奏に疾走感のあるところとゆったりとしたテンポのところの両方があるダイダイの照明にはもってこいのセッティングと言えるでしょう。

 しかし、ここまで曲を盛り上げる舞台が整っているからこそサビでの照明演出に違和感を覚えたのは間違いありません。Aメロの部分でBPMに合わせるようにライトの色を切り替え、Bメロではライトの向きを変えて再び固定することでゆったりとした曲調に沿うような照明になっていました。ここまで曲調に寄せているのであればサビで再び盛り上がるところではサステインライトを上下左右に回すなり、上下の動きを繰り返してウェーブのような効果を狙うなり、サビの盛り上がりに寄せた照明演出がくるだろうと予想していました。ですが、実際の照明演出は再び照明の向きを変えた後に固定して、BPMに合わせたライトの点滅によって動きを出していました。壁面に模様を投影する照明も特に動員していなかったので奇しくもAメロの照明演出と似た演出となっていました。私の予想に反して、照明を回すように動かすことで動きを出したのはサビではなく間奏の部分でのことでした。サビの部分で照明を回してしまうと間奏部分での動きの出し方をまた別に考える必要が生じかねないので異なるモードで動きを演出することは合理的ではありますが、盛り上がりの強さを考えるとサビで動かしても良かったのではないかと考えられます。

 さて、以上の照明演出を踏まえて演出を納得できる形で解釈しようとすると、サビで照明を回さなかったことにむしろ明確な理由があると考えれば良さそうです。そしてこの答えは「ダイスキだったらダイジョウブはどんな背景を持った曲か」というところに見つけられました。この曲が放送されたのはアニメ1期の第3話、当時まだメンバーが3人だったAqoursの初ステージの曲でした。初ステージの曲という要素は振り付けにも反映されていて、比較的単純な振り付けが多く使われています。何かを始めたばかりの頃って当人としてはとても頑張っているんだけれども、いざ成果物として人に見せるとみんなはプロが作ったものをすでに見ているというのもあってどうしても見劣りしてしまうということがあります。ただ見ているだけだったものを自分でやってみるということの難しさは、何か新しいことに自分で挑戦してみたことのある人であれば大いに共感することでしょう。「ダイスキだったらダイジョウブ」という曲にはまさにこの初心者ならではの一生懸命さという魅力があります。パフォーマンスを構成するパーツはそれほど洗練されたものではないかもしれない、しかしその荒削りな中に確かな情熱を感じる時人は大きく心を動かされるものです。そんな荒削りな中の情熱は千歌たちだけのものだったのか?そんなことはありません。千歌たちをサポートすると決めたよいつむトリオもまた初めての裏方だったのではないでしょうか?ここまで言えばもうわかってしまいますね。そう、ライブにおける点滅を多用した照明は、振り付けと同様にAqoursの初ライブ感を演出するのみならず、Aqoursの初ライブを裏方で支えるよいつむトリオの初ライブの演出という意味合いを帯びているのです。実際照明を回す演出はたくさんのライトでやるほどに躍動感が出ますが、当時のAqoursのサポート体制ではおよそ実現不可能でしょう。また正確にライトを動かすことも機械やコンピュータの力を借りないことには難しいです。その点、ライトを点滅させるという演出はむつといつきの力でもできますし、ライブ演出上も動きが出てよりキャストの動きを際立たせることができます。ここまで考えていたんだとしたら、舞台監督さん素晴らしすぎる……。こんなエモい演出どうやったら思いつくんでしょうか。

 さて上に長々と書いたようなAqoursとよいつむトリオの初ライブという解釈を得た私は曲の演奏中に高まり散らしていたわけですが、ここに至ってさらに照明演出のプロフェッショナルな仕事に心を撃ち抜かれます。上にも書いたように荒削りな中の情熱とは心を動かすものですが、その演出をそのままやってしまうと今度はライブコンサートとしてパフォーマンスを見たときに少し物足りなくなってしまいます。曲自体がアニメという背景を背負っている一方で、実際にはライブパフォーマンスとして観客を楽しませなければならない。この矛盾した状況の打破に一役買っているのが照明でした。アニメでは見られなかった照明演出がライブにおいて見られるのは普通のことなのですが、メンバーカラーを次々に映し出す照明だけがアニメと異なるわけではありませんでした。照明演出の振り返りのところでも触れたように間奏部分では照明が回ります。つまりむつやいつきにはできなかったであろう演出が使われています。アニメという背景から乖離して実際のパフォーマンスの完成度という観点から考えると、Aメロ~サビにかけては照明がほとんど固定されているので間奏で照明を動かすことによって演出の中に緩急が生まれ演出が飽きのこないものになります。アニメと密接に関わりあってしまう歌詞という要素があるAメロ~サビにかけては曲調に寄せつつもアニメの背景を意識した照明演出をとる一方で、歌詞のない間奏の部分ではアニメという背景から離脱してライブパフォーマンスとしての完成度を上げることを意識する。稚拙さとパフォーマンスとしての完成度という一見矛盾する二つの要素を絶妙なバランス感覚で照明さんは達成していたんですね。ライブ中曲の2番が終わったところでこれに気づいた私はそりゃあもう高まるなんてものじゃありませんでした。曲が終わった瞬間に連番していた友達にオタク特有の早口で話しかけてしまいました。

 

 あいも変わらず長々と書いてしまいましたが、このようにダイスキだったらダイジョウブという曲を最大限にライブ用の曲として演出した舞台監督さんと照明さんにはただただ脱帽するばかりです。これからもライブを見るたびにこういう発見があるんだろうなと思うと心が踊りますね!

 

 Aqours史上初のアジアツアーも残すところ韓国のみとなりましたが、嬉しいことにアジアツアーはセトリがほとんど変わりません。もし韓国公演を現地で見る方が読者の中にいたのなら、ぜひダイスキだったらダイジョウブの演奏中にほんの少しだけでも照明演出に意識を向けていただけたらと思います。また現地ではないけどLVで参戦!という方も、カメラさんが照明を抜いてくれることは望むべくもありませんが、キャストの後ろに映り込んだステージの色調やライトの色がアニメとリンクしているかもしれないと一瞬気にしていただけたのなら照明推し冥利につきます。

 

 アジアツアーの先には5thも控えていますし、個人的にはBlu-rayで楽しむ照明演出企画の実現も頑張らねばなと思います。まだまだやることが尽きないラブライブサンシャインのこれからの展開に輝かしい未来があることと、私に何とか5thライブの現地チケットが舞い降りてくることを願って今回のブログを締めたいと思います。

 

それではみなさん、また会う日までお元気で!