ラブライブフェスを振り返って~新しい輝きと後輩を見守る先輩の暖かさの照明~

この記事はラブライブフェス1日目および2日目のネタバレを含みますので、そちらを回避したい方々はブラウザバックを推奨します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆さま、ご無沙汰しております。あけましておめでとうございます。今年も細々とこのブログを更新していけたらいいなあくらいに思っております、まさけです。 

 

 まずはラブライブフェス2日間本当にお疲れ様でした。キャストの皆さん、スタッフの皆さんも本当にお疲れ様でした。最高の時間をありがとうと、声を大にして言いたいですね。久しぶりのμ’sの出演に思わず涙したり、声が出なくなったりした方も多かったことでしょう。私も例に漏れず初日はバッチリ泣きました。おかげさまで2日目はしっかりと彼女たちの勇姿を目に焼き付けることができました。また私は今回のフェスが虹ちゃんを見る初めての機会だったんですが、今までのラブライブにはない新しい風がラブライブに吹き込んでくる感じでこれまた非常にワクワクしました。しばらく起動していなかったスクスタをちゃんと起動しようと思います笑 Aqoursも相変わらずのパフォーマンスで安心感があるというか、1stで見たときはあんなに初々しかったのにこんなに安定感のあるパフォーマンスができるようになったんだなと成長を感じてこれも非常によろしかったです。

 

 

 μ'sが参加するライブに現地参戦したのは、サンプラザ中野でやった東京ファンミを除けばこれが初めてだったので、初日の見切れ席、2日目のスタンド席の連番をくれた方々にお礼を申し上げます。ファイナルライブでは叶わなかったμ'sと同じ空間に立つという夢を叶えられて、感無量でした。

 

 

 

個別の演出として印象に残った演出 

 

 自分語りはこのあたりで切り上げて、本命の照明の紹介といきましょう。今回のライブも全体を通していくつかテーマを見つけてやろうと意気込んでいたんですが、2日目の照明演出が予想とだいぶ違っていて正直路頭に迷いました。正直考察しきれていないのは悔しいんですが、お祭りだしちょっとくらい一貫性がなくてもいいじゃないかと開き直って、まずはライブの随所に見られたすばらしい照明を紹介していきます。

 

 

 まずライブ冒頭の未体験Horizon、最高でしたね。きんちゃんがセンターになれてよかった、できる限り花丸ちゃんに投票してよかったと思います。この曲のイントロってキセキヒカルに似てるなと思っていたんですが、照明の面でも花丸ちゃんの黄色を除けば白一色→メンバーカラー9色とキセキヒカルと同じ流れを出していましたね。歌詞もこれから夢の形が変わると言っていますし、しっかりと5thを踏まえた演出だったなと感じます。これと対照的な演出だったのが2曲目のTOKIMEKI Runnersでした。こちらはメンバーカラー9色→白一色という逆の流れになっていました。ソロ活動が主体の虹ヶ咲ということもあるのか白一色になったのは一番最後の音だけでした。ちゃっかり個性出てるなと思いつつ、9色から白へという流れは君ここと一緒だなということを考えていました。9人曲としては初めての曲であるTOKIMEKI Runnersがこの演出になるのは納得ですし、この白がAqoursのようにグループ全体としての目標や輝きといったものであるならそれは一体どんなことになるんだろうとこれから始まるアニメやスクスタストーリーへの期待感が高まりました。

 

 

 虹ちゃんといえば、最後にやったLove U my friendsで、おそらくウォッシュライトだとは思うんですが、観客席を照らすように白熱電球系の色の光が動き回っていたのが印象的でした。観客席にまるでスポットライトが当たったような印象を受けるこの演出はAqoursの「No. 10」でも使われていた照明演出でした。「あなた」と共に歩む虹ヶ咲だからこそいきなりこういう演出の曲が入ってきても違和感がないなと思います。同様の演出は「ユメ語るよりユメ歌おう」などの締めの曲でも見られますが、9色の色の光とこのウォッシュライトの効果で虹ちゃんみんながキラキラしている印象も作れて、虹ヶ咲の締めとしてもバッチリの演出でした。これからの虹ヶ咲の展開への期待感がとても高まる演出になっていたかなと思います。

f:id:Masake:20190922235932j:plain

ウォッシュライト参考画像。いろんな色の光を出せて、会場の色調を調整したりできる有能なやつです

 

 

 

 つぎはAqoursユニットですが、初日と2日目で結構印象が違ったのでそれぞれ書いていきます。初日で特に印象に残ったのはユニットの2曲目でした。「P.S.の向こう側」「Lonely Tuning」ときて「Guilty Eyes Fever」と来るかと思いきやまさかの「Guilty?! Farewell Party」でしたね。私はギルキスの2曲目が始まった瞬間に「ですよねー!!!」と叫んだ後に曲が予想と違ったことに気がついて非常に恥ずかしかったです笑 初日のユニットはAZELEAの3人が堕天ポーズしたりギルキスの3人がセルフコントロールの最後のポーズをしたりと次のユニットへ繋ぐ演出が見られました。照明でもゴボといって照明の光を切り取って光の模様を投影する道具があるんですが、その模様がユニット間で共通していて繋がりを感じられる仕様になっていました。具体的には下のような2種類のゴボが使われていました。CYaRonとAZELEAの間でゴボ1が、AZELEAとギルキスの間でゴボ2が使われていました。ゴボ2は5thで使われていたものと一緒でしたね。5thの時の記事に載せた図とは柄が違ってしまっていますが、実際には同じものを使っていたと思います。5thライブの記事はライブから3週間後くらいに書いたのでうろ覚えだったんですね。

f:id:Masake:20200120122343p:plain

初日ユニットで使われていたゴボ

 

 5thの記事を読みたい方はこちらをクリックしてくださいね。5thのゴボと比べてみると、ゴボ2は共通していますし、ゴボ1もドット系という共通点があるので、初日は5thを意識しているのかなと思いました。物語の主役としてのAqoursと声優がグループとして実際に活動するAqoursとのあいだに一区切りつけるという役割を5thライブが背負っていたと考えるとP.S.の向こう側の歌詞はキャストからキャラへあてたメッセージと解釈できるという友人の話に繋がるように思いました。Lonely Tuningも小宮有紗さんがDJ始めたことが連想されて、これからのAqoursメンバーひとりひとりが活動していくことに意識が広がりますね。ギルキスに至っては思いっきり5thでやった曲ですしやはりこれからのAqoursというイメージが強く強調されているように感じました。

 

 初日のユニットでもう一つ「おぉっ!!」と思ったのが、Lonely Tuningの最後の照明でした。この曲は最後にスクラッチ音で終わりますが、この音をイメージして先ほどのゴボ2をくるくるっと前後に回転させていました。ちょうどターンテーブルのディスクを回すような感じです。振付の中にもヘッドフォンに手を当てて、もう片方の手でスクラッチをする振付がありますが、これを回収してくれたような気がして曲の終わりにもかかわらず声が出てしまいました。こういうちょっとした遊び心が見えた時ってライブがいかに作り込まれているか気付かされますよね。

 

 

 2日目の演出は初日とは全く変わっていて、5thの要素が全然見当たりませんでした。全体の考察が路頭に迷った原因の一つがここにあります。とはいえAZELEAのときめき分類学の照明がよろしかったですね。今回はセンターステージで披露されたこの曲ですが、メインステージのモニターでは1stライブ以来見ていなかったときめき分類学の映像が映っていました。1stではメインステージでの披露だったなあと懐かしく思ったんですが、ここで誰もいないメインステージにメンバーカラーのスポットライトが降りていることに気がつきました。きんちゃんが歌っているところでは黄色が、すわわが歌っているところではエメラルドグリーンが、ありしゃが歌っているところでは赤が当時の立ち位置に合わせて降りていました。この演出もとてもいいですよね。かつて立っていた場所に彼女たちはもう立っていないんだなと思い、時の流れとか成長を強く感じて、嬉しさと寂しさの混ざった感情を覚えました。1stライブであんなにも初々しかったAqoursちゃんたちが、今や虹ヶ咲の子達を先輩として引っ張っている。私が誰もいないステージに見たのは思い出として存在するかつてのAqoursの影でした。だからこそセンターステージで踊るAZALEAの姿がより輝いて見えたんだなと感じました。

 

 この後はAqoursとμ'sのパフォーマンスでしたが、こちらは大体は見慣れた演出でした。μ’sのはメドレーということもあって過去のパフォーマンスとは違う演出でしたが、9色使って盛り上げるというのがメインの演出になっていました。一部特筆する部分はあるのですが、そこはこの後の部分で触れることとします。

 

 

 

ラブライブフェスとして印象に残った演出

 今回のラブライブフェスを通して私が強く感じたのは、虹ヶ咲もラブライブの一員なんだよということでした。当たり前といえば当たり前なんですが、μ'sからAqoursへの移行がそうだったように新しいプロジェクトの導入は少なからず抵抗感を伴います。とりわけ虹ヶ咲はG's本誌ではなくスクフェスのPerfect Dream Projectが発端ですし、受け入れが必ずしもスムーズにいかないことが予想されます。この抵抗感を和らげて虹ヶ咲の物語へファンを導くことが今回のフェスの目標の一つだったのかなと感じました。

 

 

 μ'sとAqoursの照明演出の話をする前にまずは虹ちゃんの照明演出の話から始めましょう。私は正直虹ヶ咲の概要を知っているくらいで全然追っていなかったんですが、今回のラブライブフェスを通してがっちり心を掴まれました。9人曲であるTOKIMEKI RunnersとLove U my friendsはどちらも9色を前面に押し出した照明演出でしたし、今まで使ってきた照明技法を踏襲している部分にも個人的には強くラブライブを感じました。その上でソロ活動を中心に据えた虹ヶ咲に合わせた新しい演出も感じられたところもとても良かったです。

 

 

 虹ちゃんのソロ曲を一つ一つ振り返ってみます。まずは初日トップバッターの「夢への一歩」。冒頭の「果てしない道でも一歩一歩」のところでステージのライトをピンク→白→消灯の順に変えていくことでライトが下から上へ一歩一歩進んでいく様子が示されていました。ソロということもあって基本的にはイメージカラーの薄いピンクと白を中心に構成された照明でした。ここの白はスクスタの「あなたちゃん」をイメージしているようにも解釈できて、正妻の風格を感じてしまいました。やはり幼馴染は強いですね。ただ2日目に披露した曲では特に顕著でしたが、白のライトは虹ちゃんのソロ曲で多く使われているので、白をあなたちゃんの色と解釈するなら彼女の存在が虹ヶ咲全体にとって大きいものであることを感じます。

 

 つづいて「ドキピポエモーション」。虹ヶ咲のメンバーがバックダンサーとして応援に駆けつけたのもびっくりしましたね。イメージカラーの白を前面に押し出した非常に明るい照明演出でした。特にライトがガンガン動くといったことはなかったと記憶していますが、途中青や赤のさし色が使われたのが印象的でした。ブルーは悲しみ、赤は怒りや情熱、黄色は幸せといった具合に感情と結びついた色があることを考えるとこのさし色は一つ一つの感情を表しているのかもしれないと考えられました。そう考えると璃奈ちゃんのイメージカラーが白なのは感情表現が苦手で、様々な感情(色)が混ざった状態としての「白」なんだと考えることもできるのかなと思いました。今後璃奈ちゃんの曲の照明でさし色の頻度が増えたり種類が増えたりするといった演出が考えられますが、その通りになったら面白いですね。

 

 続いて「眠れる森に行きたいな」。こちらは曲調もかなりゆったりしていたので、照明はステージ全体の色調を整えることに終始していたように思います。しかし彼方ちゃんのイメージカラーのすみれ色が曲のイメージとバッチリあっていましたね。青〜赤の色調の色はあまり明るい光ではないので必然的に会場全体が暗めになります。このおかげで睡眠と相性のいい夜の雰囲気を演出することができます。またスモークをしっかり焚いて床の上を覆わせていたのも良かったですね。ステージの床面が見えなくなって雲の上にいるような演出になっていました。雲の上で眠るイメージは定番になっていますし、雲自体も軽くてふわふわな印象があるため快眠とつよく結びついているように思えます。ステージ全体で夢心地といった印象を表現できていたので、これは彼方ちゃんの演出として非常に成功していたと言えるでしょう。

 

 続いて1日目のラストを飾った「Starlight」。果林先輩のイメージカラーの青を中心に水色と白の色を織り交ぜてレーザーを多用した照明演出でした。青のライトもやはり暗い色になるので、イメージカラーを出しつつ、そこに白や水色の光を差し込むことで星の光を表現できていたかなと思います。個人的にすごいと思ったのは、レーザーがステージの上の方にも設置されていて、そこからステージに向けてレーザーが打ち下ろされていたことでした。上からレーザーを下ろすことで今までよりも立体的なレーザー演出ができていました。キャストのいる方向へレーザーを飛ばす以上今までよりも安全への配慮が増えただろうなとは思いますが、虹ちゃんでこうした新しい演出を見られるのは非常に嬉しかったです。ちなみにこの上からのレーザーは果林先輩の他ではSaint Snowでちょっと使われたくらいだったので、このレーザーがほぼ「Starlight」のために用意されたと思うと、やっぱ虹ちゃんラブライブフェスの主役張ってるなと思わせてくれますね。

 

 つづいて2日目に入りまして「あなたの理想のヒロイン」。しずくちゃんのイメージカラーである薄いブルーを基調にしつつ、白のライトをゴボを使って模様にして投影していました。お花っぽい見た目のゴボが使われていたんですが、この模様がヒロイン感をさらに高めていました。情景描写の手法として背景にお花を咲かせるのがあると思うんですが、ちょうどそんな感じで柔らかい幸せ感が表現できていたなと感じました。

 

 

 次に 「Evergreen」ですね。エマ・ヴェルデのヴェルデがイタリア語で緑を意味することからもイメージカラーがライトグリーンなのは納得ですね。照明演出上もライトグリーンは基軸の色の一つとなっていました。これにスカイブルーを加えた2色が基本となっていましたが、これは「どこまでも広がっているエヴァーグリーンと空」という歌詞を反映したものだろうと思います。ゴボは使っていませんでしたが、照明に大きな動きを持たせない演出計画は「あなたの理想のヒロイン」と似ていましたね。メロとサビで照明の照らし方自体を変えていたところが違いかなと思います。

 

 

 3曲目はかすみんの「ダイアモンド」でした。2日目のバックダンサー曲がこの曲でした。愛され後輩キャラな感じも出ていますし、ちょっとから回っているところもたまりませんね。照明は黄色と白を織り交ぜたものに、先ほどのゴボ2の模様も白でつけていました。かなり豪華な構成で、曲名に負けないゴージャスさがあったと感じます。白と黄色でかなり光量が多い組み合わせになっていて、璃奈ちゃん同様かなりまぶしい感じの照明演出になっていました。この明るい雰囲気はかすみんの表現としてぴったりでした。

 

 4曲目は宮下愛さんの「めっちゃGoing!!」でした。メロの部分ではオレンジ1色、サビでは白を加えて、動きも出していました。風船が降ってくる演出も元気な愛さんらしい演出になっていたなと感じます。サビのライトの向きはちょうど正面から見ると扇型に広がっているように見える配置で固定されていて、ライトの色をオレンジと白で変えることでバケツリレー的に色を動かしていました。イメージとしては下のような感じです。

 

[白] [橙] [橙] [白] [橙] [橙]

[橙] [白] [橙] [橙] [白] [橙]

[橙] [橙] [白] [橙] [橙] [白]

 

こうやって動かすと白のライトが左から右へ動いていくのが綺麗に見えますよね。白→橙→白→橙と交互に動かすよりも動きが見て撮りやすいのが特徴です。「めっちゃGoin'」はサビのテンポ感が強いのでライト自体の向きを変えて動かすよりもこちらの方が曲に合っているなと感じました。このテンポ感の演出はAqours 2ndライブの恋アクの冒頭でも確認できます。気になった方はこちらの動画の6:05あたりから確認してみてください。キャストの後ろのスポットライトが左から右へと青い光をを渡していくのが確認できると思います。

 

 最後がせつ菜ちゃんの「CHASE!」ですね。9曲のうち唯一炎が演出で使われたのがこの曲でした。イメージカラーの赤と炎の組み合わせはMY舞☆TONIGHTやLOVELESS WORLDを思わせる組み合わせでしたが、CHASE!もハードさを前に出した演出でしたね。サビでは白のライトを高速で点滅させていましたが、この演出はLOVELESS WORLDで同様の演出を見ることができます。気になった方はこちらの視聴動画を見て見てみてください。LOVELESS WORLDは9:22あたりから始まります。

 

 ここまで虹ちゃんのそれぞれの曲の演出を追ってきました。どの曲もキャラクターのイメージカラーをしっかり使って、なおかつ曲の印象に合わせた演出がなされていることがわかります。初日と2日目を合わせて虹ちゃんは一人一曲ずつソロ曲を披露したことになりますが、ソロ曲全てにおいてメンバーカラーを演出の基軸に据えているのは実は初めての試みです。μ'sにもAqoursにもソロ曲は存在しますが、照明演出において全てメンバーカラーを基軸に据えているものはありませんでした。比較的記憶に新しいところでいくとAqoursの3rdライブでBlu-ray特典のソロ曲が披露されていましたが、ルビィちゃんのRED GEM WINKでは途中でステージ照明が赤に染まる部分がありますし、ダイヤさんのWHITE FIRST LOVEでは曲名に合わせて照明は白がメインになっていました。これを踏まえると、虹ちゃんのソロ曲はどれもメンバーカラーを思いっきり押し出した演出であることがわかるでしょう。ラブライブフェスでの虹ちゃんへの力の入れ方はかなりのものがありました。スクスタの映像がモニターで使われることが多かったことも「ラブライブの次のステップ」を意識させられました。

 

 

 この虹ちゃんの頑張りを受け止めたのがAqoursとμ'sでした。まずセトリの面からなんですが、かなりプレッシャーがかかる1曲目はAqoursが担当し、2曲目からグループ1組目として虹ちゃんが担当しました。どの部分で出演してもプレッシャーはかかりますが、仮に虹ちゃんが失敗してしまっても、後からAqoursとμ'sで巻き返すから、安心して全力でステージに望みなさいという意思を感じますよね。1日目はAqoursがグループ2組目を担当して締めをμ'sが担当する。後輩を守る先輩の暖かさを感じる構成でしたよね。2日目もやはり虹ちゃんはグループ1組目を担当しています。ただし2日目はμ'sが2組目を担当してAqoursが3組目を担当しました。1日目と同じく後輩を守る先輩の構図を出しつつ、μ'sが担当したトリを担当できるくらいAqoursちゃんたちは成長したぞと言われているような気持ちでした。これをみるとときめき分類学の演出がさらにぐっと心に訴えかけるものになりますね。

 

 そんな後輩を見守る先輩という演出がμ'sとAqoursの照明演出にちらっと混ぜられていたのがめちゃくちゃ心に刺さりました。ここで紹介する演出は私が肉眼で確認した2日目のものですので、もしかすると1日目は違ったかもしれません。

 

 まず2組目を担当したμ'sですね。ぼらららとスノハレをフルで披露して、その間にスペシャルメドレーを披露しました。ぼらららとスノハレは懐かしの照明を再現した照明演出で本当にタイムスリップしたようでした。一方メドレーは基本的に9色で照明を展開して、Love U my friendsのようにウォッシュライトで客席もバンバン照らしていて、非常に楽しげでキラキラした演出になっていました。この9色展開が途絶えたのがSTART:DASH!!の時でした。メドレーの中で唯一cメロへ飛んだSTART:DASH、この部分の歌詞が「またひとつ夢が生まれ」なんですよね。このときμ'sはトロッコに乗ってセンターステージのさらにその先のところにいたんですが、その後ろのメインステージでは光の色がオレンジ、オレンジ、うすいピンクの順でつけられていました。この時点でお気づきかと思いますが、これは各グループの公式順で一人目に当たるキャラクターのメンバーカラーです。虹ヶ咲という新しい夢が始まったんだなということを強く意識づけてるとともに、μ'sの夢、Aqoursの夢、そして虹ヶ咲の夢と多くの夢の軌跡があったねと語りかける先輩としてのμ'sがそこにはいました。後輩を見守るμ'sの頼もしさと後輩たちを見守る暖かさがこの照明には現れていたように感じました。

 

 次にAqoursですが、2日目にはHAPPY PARTY TRAINが披露されました。この曲のパフォーマンスの間、一貫してステージを彩るLEDの光が虹色を出していました。実はメンバーカラー9色なだけじゃないかと思ったりもしたので直後の君ここと色を見比べていたんですが、HPTの時はやっぱり緑色が果南ちゃんの色にしては濃かったですね。どちらかというと花陽ちゃんの緑に近い色になっていました。この虹色に気付いた時に楽曲の背景に思いを馳せてみると、HAPPY PARTY TRAINAqours Next Step Projectの最初の曲だったなと気づきました。歌詞でも冒頭で「受け取ったよ次の夢を」という言葉が出てくるように、この曲もまた「新しい夢」をテーマとした曲でした。この曲が初めて披露された時にはAqoursの次の一歩を印象付ける曲でしたが、今回のライブでは照明演出と相まって虹ちゃんの次の一歩を印象付けるものとなっていました。Aqoursもまたμ'sのように後輩を暖かく見守る先輩としての貫禄を身につけつつあるんだなと感じることができました。

 

 このようにAqoursやμ'sの曲でも後続のグループを意識した演出が差し込まれていました。上に書いた以外にも、メインステージの階段部分にピンスポットライトが当たると、光のふちの部分が青や緑といった原色に別れていて虹色に見える瞬間があったり、階段部分自体の光に虹色が差し込まれていたりとライブを通して虹を意識させる演出が散りばめられていたように感じます。

 

 

 ここまで読んでいただいてありがとうございます。改めて振り返ってみるとAqoursの5thを意識した演出がなされていたことには意味があるように思えますね。Aqoursの5thはNext Sparklingをタイトルに冠したライブだったからこそ、「夢は変わっていく」「新しい輝きへと手を伸ばそう」というメッセージが強く印象に残ったライブでした。この新しい輝きをAqoursだけでなく、ラブライブプロジェクト全体という文脈で再提示してくれたのがラブライブフェスだったのかなと感じます。今回のライブを通して私のように虹ちゃんに興味を持ったという人、Aqoursを今まで受け入れられなかったけど興味を持ったという人、μ'sは今まで見たことなかったけど今回のフェスで興味を持ったという人がいることでしょう。こうしてまたラブライブの輪が広がっていけばそれは素敵なことだなと思います。

 

 

 長々とお付き合いありがとうございました。ラブライブプロジェクトのさらなる繁栄とラブライブのキャストの皆さんのこれからの活躍を願って締めの言葉といたします。ユニットライブには忙しくて応募できなかったのでチケットの空きが降ってこない限りは参戦する予定はありませんが、またライブを見た時には記事にしようと思いますので、その時またお会いしましょう。

 

 

その時までみなさんどうぞお元気で!

 

 

音で沼津を照らしたい、その照明に心を照らされたわたし

 皆さまお久しぶりです。まさけです。初めましての方は、お初にお目にかかります、まさけと申します。

 

 5thライブの3週間後に意地と根性で照明ブログを書き上げてから早3ヶ月といったところででしょうか、皆様いかがお過ごしだったでしょうか?私はと言いますと、あの後ライブブルーレイで楽しむ照明演出企画を形にするべく、視聴動画を漁ってちゃんと引きの画が映っているかとか、引きと寄りの割合はどうかとか、寄りの時に照明機材が映り込むことは頻繁にあるアングルで撮られているかとかを検証しておりました。その甲斐あって実際ある程度なら照明演出楽しめるじゃないかということで、Blu-rayも入手してなんとか9月初旬開催の僕ラブに間に合わせる事が出来ました。正直自己満本もいいとこだったので売れるわけないとタカをくくっていたのですが、予想以上の反響をいただいてイベント会場では印刷分全て完売という奇跡に巡り会わせていただきました。感想もちょくちょくいただいて嬉しい限りです。もしこちらの本にご興味のある方は右のURLで通販を承っておりますので、ぜひご利用ください↓↓↓

twilightrobe.booth.pm

 

 

 

 さて近況報告はこの辺にしておきまして、本題の音で沼津を照らしたいの第4回公演へと話を移しましょう。音で沼津を照らしたい(通称おとぬま)はラブライブ!サンシャイン!!曲のインストアレンジを中心に沼津で開催される有志の音楽イベントです。詳しい来歴についてはお恥ずかしながら存じ上げませんが、その評判の高さを以前より私も耳にしていました。しかし足を運ぶ機会に恵まれず、今回4回目の公演にして初の参戦となった次第です。4回目の公演を知ったのもこの公演で技術監督と照明を担当されていたまつばらさんのツイートを偶然目にしたことがきっかけでしたし、足を運ぶことができたのも偶然バイトが入っていなかったからなので、偶然が重なっての巡り合わせって本当にあるんだなあとしみじみ思いました。

 

 肝心のライブパフォーマンスも非常にレベルが高かったです。まず出演者の方々が総じて演奏が上手い。音楽はかじった程度なので耳は肥えていないかも知れませんが、私は大満足でした。また大人数でのパフォーマンスにもかかわらずしっかりと音もあっていましたし、音量のバランスもしっかりと調整されていました。PAさん本当におつかれさまです。おかげさまでこちらも我を忘れて楽しむことができました。ライブ自体も複数の部に分けられていて、幕間の映像も用意するなど音楽パフォーマンスだけでなくライブを構成する細部にもしっかりと気が配られていて芸が細かかったです。「鯖は飲み物」のハッシュタグ、機会を作って使わせていただきます笑

 

 そして大本命の照明!!ここが本命なのも少し変かもしれませんが、正直度肝を抜かれました。じっくりと語っていくとしましょう。ここからは機材紹介をした上で、Dropout!を中心に印象に残った照明演出を紹介します。

 

機材紹介

 

まずは会場の特徴から。今回の会場は沼津市民文化センターの大ホール。収容人数1516人の大きな会場でした。演劇用にも使われる舞台ということでサスペンションライトがある!!!驚きとともにテンションが上がる!!!これは照明本を書く過程あってこその驚きなんですが、そもそもライブ会場に普通のサスペンションライトは映像を見る限りでは持ち込まないみたいなんですね。これはよくよく考えると当然で、搬入できる機材量が有限である以上動かしたり色変えたりできないサスペンションライトはコスパ悪いんですよね。その点今回は会場にこのライトがあったのでスクールアイドルの地元ライブ感高くてテンション上がるな!!!と一人で高まっておりました。使い方もしっかり考えられていて、ステージ上の演者を照らすだけでなく観客のレスに合わせて光らせることもしていました。Awaken the Powerではアニメ映像中の花火のようにイントロに合わせて光らせる場面もあり、まるでAqoursのライブの時のように「わかりみ~~!!!」と声を上げてしまいました。

f:id:Masake:20190923003930j:plain

参考画像:サスペンションライト

 

 サスペンションライトの他にコロガシみたいなライトが客席に向けて設置されていたのも印象的でした。コロガシとはフットスポットライトとも呼ばれ、床にそのまま置いて使うタイプのスポットライトのようなものです。高さが全然ないので床の上にライト本体を直置きしているみたいな見え方をしますね。演者を照らすサスペンションライトとは対照的に、こちらは綺麗な逆光を作ってくれるライトでした。サスペンションの光を落としてコロガシを入れると明暗のコントラスト強くついて画面が引き締まります。全体の光量を上げるのにも使われていましたし、こちらもサスペンションライト同様Awaken the powerの花火演出にも使われていました。

 

 さて舞台用照明機材にとどまらないのがおとぬまのすごいところ。しっかりとムービングライトも設置されていました。ムービングライトはライブハウスでも置いてないところにはないので、大きめの音楽ライブに来た感が高まりますね!!私の席から見えた感じだとステージの前方上部、客席からも見える位置に1列と、客席からは見えないステージ中央あるいは後方にもう1列配置されていたように見えました。こちらのライトはLEDを使用したウォッシュライトのタイプだったかなと思います(下は参考画像なので機種は異なるかもしれません)。光の色を変えることができるので会場の雰囲気づくりが得意な子ですが、光を点滅させたり向きを変えたりと多彩な演出に使えるのが良いところですね。ドームなどの大きな会場でメインに使われるムービングスポットライトと違い光線を出すのが得意なわけではないウォッシュライトですが、おとぬまでは白や黄色といった高光量の色では光線がうっすらと見えていました。

f:id:Masake:20190922235932j:plain

参考画像:ウォッシュライト

 上記の他にストロボとレーザーも使用されていました。この二つは使用法を誤ると体調不良や健康被害に繋がるので気をつけなければいけませんが、その分上記のライトではできない特徴的な演出が可能になるのがいいですね。今回のおとぬまで心残りなところはスモークを焚いていない関係でこのレーザーがほとんど見えなかったところでしょうか。私のように演奏中に後ろを振り向くならまだしも、ステージを見続けていた方からすると両脇でなんか光ってるなくらいにしか見えなかったかなと思います。レーザーに限らずライブの照明機材の光は指向性が強くあまり拡散しないので、スモークを焚くことでこれを光線として見える形にできるのですが、スモーク量の調節が難しい、機材が手に入らない、あるいは会場・演者の事情により使用できないといった背景があったのかなと思います。Aqoursに限らずですが、ライブは多くのプロフェッショナルの仕事の上に成り立っているんだなと改めて実感できますね!

 

さてこれで機材紹介はおしまいです。次は印象に残った演出をかいつまみつつ、DROPOUT!?の照明演出を語りましょう!

 

楽曲中での照明演出

 さてお待ちかねの楽曲中での照明演出です。ライブ全体を通しては2部くらいまでの前半はサスペンションライト、コロガシ、向きを固定したムービングライトの3つで照明を回していたなと思います。私自身、前半部を見ていた時にはせっかくムービングライトがあるのに全然動かさないしもったいないなあと思っていたんですが、後述のDROPOUT!?から使ってる照明機材は増えるし使い方も種類が増えるしで最高でした。これは本家のAqoursのライブでも同様でして、ライブが進むにつれて予想もしなかった照明演出が出てきて楽しくなるんですよね。この辺りも意識していたのかはわかりませんが、ものすごい再現度でした!

 

 印象に残ったというかわかりみが深かった照明演出としては、まずBrightest Melodyのサビ直前でコロガシをゆっくりとつけていく朝日の演出ですね。1番サビではこれが行われなかったので「朝日演出ないの?ないの?」ってなってたんですが、2番サビに入るところでこの演出が飛び込んできて「それな〜〜〜〜!!!!!!」ってなってしまいました。焦らしプレイとは意地が悪いですね笑 このコロガシはサビ中光ったままなんですが、ステージ後方のムービングライトの色が紫がかった白から水色へと変わったのもよかったですね。「夜明けから朝になったじゃん!!!」と心の中で思いました。スモークがないためライトが反射する床の色だけが変わって見えるんですが、これが海面のイメージに繋がったのもよかったです。沼津といえば海だしね、Aqoursの物語にも海は欠かせないよねということで深く印象に残っています。

 

 海といえば波ですが、レーザーを波型に展開する演出もされていました。「卒業ですね」をはじめとしていくつかの曲で使われていたんですが、これは後ろの壁に当たったレーザーの光を元に判断しました。波型のレーザー光といえば5thで使われていましたね。Over the Next RainbowかNext Sparkling!!のどちらかだったような気がしますが、当時見た景色を思い出すようでした。正直レーザーの光自体が見えていなくても壁に当たった波状の光が重なる様子はそれ自体がとても美しいんですよね。ちょうど曲も5thでやった曲だったので、「5thのメットライフドームで壁面に映ったレーザーの光を見ながら『めっちゃ波じゃん、劇場版冒頭へのさりげない言及じゃん。なんなら閉校祭の回で波がAqoursの文字を消す演出と劇場版ラストで波の先にAqoursの文字が残ってる演出も意識に上るじゃん、バケモンかよ!!!!!!』と思っていた人が私の他にいたなんて、キセキだよ!!!!」と思っていました。同類がいるって嬉しいですね。え?ひどい妄想だって??知ってますよ!!!!!!!(血涙)

 

 ちなみに「卒業ですね」のレーザー演出は海の波模様のレーザーに留まっていませんでした。同じ波線のモチーフを使っていても、波の幅と高さを小さくした波線を使ってそれを伸び縮みさせるように動かしたり、幅を抑えつつ高さを出した波線をちょうど海を泳ぐウミヘビのように動かしたりと、正直言葉では説明し難い動きをいくつもさせていました。このレーザー演出は5thの時の演出とかなり似ていたように思います。とはいっても5thの卒業ですねの照明の記憶はかなり曖昧なのでなんともいえないんですが…。「5thのレーザーもこんな感じの不思議な動きしてたな」という感情を喚起されてただただ脱帽といった感じでした。

 

 このように後半では照明機材の種類や使い方に工夫を凝らしたものが多く大満足だったんですが、この後半の皮切りとなったのがDROPOUT!?でした。幕間が終わって函館のユニットカーニバルを彷彿とさせる映像がスクリーンに映り、同時にSelf Controlのインスト(?)の音源がうっすらと流れて「まさか?」となりながら始まった3部ですね。この映像自体めちゃくちゃ出来が良くてVJグッジョブ!!!!と心で叫んでいました。導入部ですでに高まり切った頭をスッとなでるような滑らかなピアノとそこにぶち込まれる重く歪んだギターの旋律で完全に心を持って行かれました。そしてドラムの入りと同時に高速で点滅する白に統一されたムービングライト。それまで画一的に揃っていたムービングライトの向きがここにきて一つ一つが別の方向を向いていました。それが高速で点滅することで光が無差別にいろんな方向へと飛んでいる印象を作り出していました。白色光のため光線がスモークなしでも光線がうっすらと見えたのもよかったです。光線の直線的な外見と明暗の強いコントラストが曲のハードさを、点滅の速さがビートの速さを、そして色々な方向へと飛ぶ光が曲の暴力的なまでの躍動感を演出していました。サビの直前ではストロボも使用されて、白と黒のコントラストがより強烈に印象付けられていました。DROPOUT!?という曲のハードな印象を光の色調、方向、強弱の3モードを使って非常に綺麗に演出していました。これは本家顔負けといってもいいでしょう。

 こうしたハードな演出が曲に私を引き込んでくれたおかげで、この曲のハードさを受け入れつつ曲の背景に意識を伸ばすことができました。激しく点滅し光を撒き続けるムービングライトから感じるのは鹿角理亞の激情という印象。その激情の正体とはなんなのか?優勝候補とまでいわれたSaint Snowが予選敗退という結果に終わってしまい、その責任を強く感じている理亞、この姿はアニメだけでなく劇場版でも色濃く描かれていきます。DROPOUT!?という曲はそのタイトルからも敗退という結果を意識した曲。この敗退という結果をうけて理亞は後悔と自責の念に苛まれたことでしょう。敗退の瞬間まで信じ続けた自身の行動とそれを打ち砕く敗退という事実。誰しも自分が間違っていたと認めるのは難しいものですから、自尊心を守ることは人間の行動原理の一つと言えるでしょう。この時の理亞もまた敗北という事実による自尊心への脅威を感じていたはずです。しかしそれと同時に尊敬する姉の最後の晴れ舞台に泥を塗ってしまったという罪悪感にもあったはずです。自分を肯定したいという気持ちと姉への強い罪悪感、どちらも理亞の正直な感情だからこそこの二つの感情の衝突はやり場のない苛立ちとして理亞に現れたのではないでしょうか。このやり場のない苛立ちこそが理亞の激情の正体、激しくのたうつ光線の中に私が見出した意味なのだろうと気づかされました。曲を楽しむのと同時に頭がフル回転してそれまで見えなかった景色が見える、照明演出を考えていて一番楽しい瞬間です。

 

 CDの音源を聞いているだけでは至れなかった「曲が伝わる」の瞬間をもたらしてくれたおとぬま照明担当のまつばらさんとさとるさん、本当に素敵な時間をありがとうございました!!!!!!!!!!!関わったスタッフさんの名前がわかるって嬉しいですね!!!!!

 

 ここに書いた以外にも照明たくさん働いていました。いまパッと思い出したところですと、スタッフロールでスタッフさんとspecial thanksが流れた後、and youの文字が画面に出たところでコロガシを使って客席にライトを当てるとか、細やかながらメッセージ性に富んだ演出がなされています。しかし悲しいかな今回はメモを取っていない、高まった頭から印象的な照明演出が飛んでいってしまいました。

 

 最後に、おとぬま次回があるならまた絶対行こうと思いました!!照明演出だけとっても、次はこんな風な動きもできるようになってるかもとか、ゴボが導入されたらこんな演出できそうとかたくさん楽しんで鑑賞できました。また照明演出だけでなく、VJさんの映像も素晴らしかった。僕らの走ってきた道はの部分で冒頭に無人のホールから映像を始めたり、幕が開く映像を差し込んでいたりしてこだわりを感じましたし、Believe againの雪の結晶模様の鬼の再現度…。ライブを通してクオリティがとても高かったです。改めて素敵な時間をありがとうございました!!!!!!

 

 

 

 

セトリと合わせて考える照明 ~Aqours 5th Liveのテーマと照明演出をマクロに振り返る~

この記事はAqours 5th Liveのネタバレと照明演出への妄想が多く含まれているので、回避希望の方は適宜ブラウザバックをお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、本業にしばらく追われていたのですっかりこちらの編集を放置してしまっていましたが、今回のライブもとても良い内容でした。私自身はライブ中どうしても高揚感にとらわれてしまってあまり感極まって泣いたりはしないんですが、その分ライブが終わったあと数日くらいはBelieve AgainやBrightest Melodyを聞いては照明演出やらそこまでの物語やらが頭に浮かんでは急に泣きそうになったりしていました。

 

 今回のライブでは全体を通して照明演出を見てみようと初めてライブ中メモを取るということをして見た訳ですが、セトリと合わせて考察した結果セトリの方が中心になってしまいました。ということで今回は「ライブのセトリがエモすぎる」という内容を中心に「照明がエモいセトリとどうリンクしているか」という話をできればなと思います。

 

5thライブのテーマ 

 照明演出の前に今回のライブのテーマについて少し考えて見ましょう。まず劇場版公開の後のライブですから、今回の目玉曲は何と言っても映画曲ですね。中でもNext Sparklingはライブタイトルにもなっているくらいです。ラストを盛り上げる曲ではなくしっかりと演出するこの曲で締めるという構成は素晴らしいですし、だからこそこの曲が残した強烈な余韻がライブが終わった後も会場を捉えて離さなかった、ライブから数日空けても私の心を離さなかったのだろうと思います。

 

 そしてこれとは別にもう一つ今回のライブテーマとして、私自身は「Aqoursの歩みを振り返って、そして君も夢を追え!」という強いメッセージを受けたように思います。このメッセージを感じた一つの手がかりとして、ライブのセトリがあります。

  • 1.僕らの走ってきた道は…
  • 2.スリリング・ワンウェイ
  • 3.青空Jumping heart
  • -MC(コーレス)-
  • 4.SKY JOURNEY
  • 5.Daydream Warrior
  • -幕間アニメ-
  • 6.逃走迷走メビウスループ
  • 7.予測不可能Driving!
  • 8.Marine Border Parasol
  • 9.ハジマリロード
  • -幕間アニメ(劇場版ダイジェスト映像)-
  • 10.Hop? Stop? Nonstop!
  • -幕間アニメ-
  • 11.恋になりたいAQUARIUM
  • 12.君の瞳を巡る冒険
  • 13.未来の僕らは知ってるよ
  • 14.SELF CONTROL!!
  • 15.Believe again
  • -幕間アニメ(劇場版ダイジェスト映像)-
  • 16.Brightest Melody
  • 17.Over The Next Rainbow
  • -MC-
  • 18. ホップ・ステップ・ワーイ!
  • EN1.卒業ですね
  • EN2.Guilty!? Farewell party
  • EN3.サクラバイバイ
  • -幕間アニメ(劇場版ダイジェスト映像)-
  • EN4.Next SPARKLING‼︎

こちらは1日目のセトリですね。「このタイミングでこの曲!?」みたいなことが1日目結構あったので、2日目の会場へ向かう道すがらなぜこのセトリだったのかをぼんやりと考えていました。そこで最初に思ったことですが、「僕らの走ってきた道は…」「スリリングワンウェイ」ってそのまま文として噛み合っているじゃないか!と。そこで、実はMCや幕間を境界線にしてそれぞれのセクションでまとまりを作っているんじゃないかと。そしてそれをつなぎ合わせるとライブのテーマが見えて来るんじゃないかと。

 

 そのように考えてみると最初のセクションは僕ら(Aqours)が走ってきた道はスリリングワンウェイだったということになります。スリワンのサビには「止まらないよ 溢れそうな思いは。誰かのためじゃなくて自分勝手なパッション」「めちゃくちゃな願いを 誰もが隠してるよ 自分勝手にレッツゴー」とあります。他の誰でもない自分だけの願い、それを一言で言うのであれば「夢」という言葉がピッタリでしょう。ここに追い風を加えるように青ジャンが「見たことない夢の軌道、追いかけて」と歌い出します。つまり一番最初のこのセクションでは夢を追い始める時の高揚感や夢を実際に追いかけ始める時の熱い気持ちを表現していると言えるでしょう。「輝きたい!」そんな高海千歌の夢からラブライブサンシャインの物語は始まりました。この始まりはラブライブでの「叶え!みんなの夢!」という台詞も同時に思い出させます。ここからはAqoursの辿った夢の軌跡と夢を追う人たち一般によくあることを念頭に置いて続きを見ていきましょう。

 

 さて、高海千歌一人の夢、そしてAqoursの物語に関わるキャラクターたちの「夢の軌道」を描くアニメシリーズにおいて、その夢が壁に直面する部分がアニメ2期で描かれていきました。MCの後のSKY JOURNEYとDaydream Worrierはここに対応していると考えてよいでしょう。冒頭の「どこから来たの?ずっと遠くから!」そして2番の「どこを目指すの?もっと遠くへと」という文言はまさに道半ば、しかしまだ自分が至らんとする場所にたどり着いていないイメージへと聴衆を誘い込みます。しかしこの前向きな言葉とは裏腹に、サビでは「胸に確かなもの持ってたらそれだけでなんとかなるって なぜ優しく語れるのだろう」と歌います。「すぐにここから次の場所へと旅立つだろう」の部分では夢を追う中で次第に迷走していく姿が如実に浮かびます。自分のしたいことやりたいことを追い求める中で道に迷うことは誰しも経験のあることではないでしょうか、そうした背景を自分も持っているからこそこの歌はとても心に刺さりました。そしてDaydream Warriorでは「夢は夢でしかないと 嘆きの果ての運命は変わらずに今はlost love」と歌います。所詮夢は夢だと、諦める人の多くが口にする言葉が出て来ます。このあたりからも夢を追う途中で困難に直面しているイメージが強く湧くことでしょう。ちなみにこの曲で夢とは別に「恋人・想い人」というモチーフが出て来ますが、恋人のポジションに夢をいれてみると、これも少しあとになって効いて来ます。

 

 さて幕間アニメを挟みまして逃走迷走メビウスループという曲で先ほどのセクションのテーマを引き継ぎつつ、曲調を明るいものへと変えていきます。夢との恋路がうまくいかない時、人は諦めを選択しそこから逃げることもあるでしょう。しかし自分が夢を諦めても夢の方は簡単に諦めてくれたりしません。かつての夢がしばしば脳裏に浮かんでは諦めたのだと言い聞かせて夢から逃げる。この様子は裏を返せば自分が夢を諦めきれず心のどこかでそれを追い続けているという関係性を反映しているのではないでしょうか。こんな逃げたり追いかけたりといった様子は「追いかけられてるはずが 追いかけてるのかも本当は」という歌詞にぴったりですね。また「本音ってばあついね」という歌詞が、SKY JOURNEYの「あついよ」と呼応して夢への渇望をここで再び思い出させてくれます。

 

 メビウスループに続く学年曲3曲では共通して見られるテーマがあります。「夢があったらdriving」「迷いながらdriving 望むところさ」と歌う予測不可能Driving!、「水の中揺れる太陽 捕まえたつもりでもキラキラこぼれてしまう」「僕らの夢の色は変わっていくと気づいた」と歌うMarine Border Parasol、「ハジマリとオワリの線など引けないよいつのまにかまた始まる」「駆け抜けたがる僕らはどこへ」と歌うハジマリロード。これら3曲はどれも夢が固定的なものでないこと、だからこそどこへ向かっているのかわからないことが決して迷走ではないこと、そしてそれこそが自由であるということだと歌っていきます。これはすなわちSKY JOURNEYの部分で出てきた「迷走」というあるべきではない状態を「自由」というあるべき状態であると塗り替えているわけです。夢を追いながらも自分のあり方に悩む人たちのネガティブな気持ちを、それこそ夢に近づくためのあり方だとポジティブなものに捉え直していくわけですね。

 

 そこに綺麗に追い討ちを入れるのがHop? Stop? Nonstop!です。「ミライはイマの先にある それには自由な翼でFly away!」と歌うこの歌は映画の中で鞠莉が自分のやりたいことを母親に認めてもらうように歌う曲です。やりたいことを自ら追うのだと、そのためには前セクションで出てきた「自由」が必要なのだと訴えていきます。学年曲のテーマの後に聞くと映画での役割とは別にAqoursの夢が私たち聴衆の夢へと繋がり広がっていく様子が眼に浮かぶようですね。

 

 幕間を挟んで恋アクから君の瞳をめぐる冒険へと、そして映画曲へと繋がります。恋アクに関しては正直「道ができていく」という部分が欲しいのかなくらいに思っています。曜ちゃんソロにできるヨーソロードを自分の道が拓けていくイメージと重ねているのかなと思います。この道ができる演出はDay2の果南レールも同様ですね。一方君の瞳を巡る冒険についてはDaydream Warriorの時に立てた「恋人、想い人」のモチーフが活きてきます。「謎はいつも目の前で違う場所を開く、謎を解いてこのセカイであそぼうよ」「僕は君を見てる 君の目に僕を映してよ」「見つけたの言葉を待ってるよ、早く探してよ」これらの文言を含む君の瞳を巡る冒険の歌詞は夢から私たちに語りかけていると考えると、これまでのセトリとぴたりと符合する点が多く出てきます。目の前で違う場所を開くからこそ私たちは迷ってしまう、夢を夢だと諦めてしまう。それでも夢が私たちを追ってくるのは夢が私たちを見ているからなのでしょう。デイドリで片思いのように見せかけたところを君の瞳を巡る冒険で両想いへとリフレームしていく。その間にある謎が人と夢とをすれ違わせてしまうというメッセージを発しています。だからこそこの次の曲が未来の僕らは知ってるよなのでしょう。「夢のカタチをさがして」いる私たちに「未来の僕たちは答えを持っているはずだから、本気で駆け抜けて」と伝え、その答えとはすなわち「We got dream」だと強いメッセージを投げかけてくるのでしょう。「君と夢との出会いは果たされる!」と強く私たちの背中を押してくれるのがここまでの流れです。ちなみに君の瞳を巡る冒険はDay2ではMy list to youになるわけですが、こちらも未来に会うべき想い人へ語りかけるという要素は引き継いでいます。ただ語りかける強さは君の瞳を巡る冒険の方が強いように個人的には感じますが(笑)

 

 ここまでで打ち立てた「あなたの夢を追え!」というメッセージは劇場版曲へとつながって、映画でのメッセージの「やってきたことはゼロにはならない」「明日は今日より夢に近いはずだ」という映画のテーマへ合流していきます。このようにまとめると今回のセトリは安直にアニメシリーズでの曲をたどるのではなく、それでいてこれまでのAqoursの歩みと夢追う人たちのイメージを重ねて映画曲の希望のイメージを最大化するように構成されていたと言えるでしょう。Aqoursの物語が必ずしも一筋縄にはいかない夢のあり方を描く作品だったからこそ伝えられる「うまくいかない時があっても夢を追い続けることの美しさ、尊さ」というメッセージを、そしてこのような文脈を事前に立てているからこそ「新しい輝きへと手を伸ばそう」というメッセージが最大限聴衆に響くように構成されたライブだったのかなと思う次第です。

 

各セクションでの照明演出

 セトリを眺めている時に考えた構成の素晴らしさを語っただけでかなり文字数が多くなってしまったのですが、各セクションでの役割と照明演出におけるモチーフとの対応を見ていくにはどうしても欠かせないのでお付き合いいただきました。ここからは照明装置の動きだったり壁に映った光の模様の動き方を中心にセクションテーマがどのように表現されているかを見るとしましょう。ここで記述する照明の演出はDay2でメモを取ったものなのでセトリはDay2のものとなります。

 

 まず最初のセクションですが、ここでの照明の特徴はライトを固定して光の軌道は動かさずに曲のリズムに合わせて照明を点滅させたり色を変えて照明に変化を生み、ステージ上のLEDライトの方で動きを出していました。ステージ上部についたサスペンションライトや床や客席の位置にあるコロガシのようなライト(ここではフロアライトと呼ぶとしましょう)が曲中で回っていたのは青ジャンでの間奏くらいでしょうか。このような「直線的」「固定的」といった印象の照明演出は「ワンウェイ」の文字によく現れるような迷いのなさを強調しているように思えます。まさに夢に向かってまっしぐらな頃の象徴的な態度を意識した演出だったのではないでしょうか。

f:id:Masake:20190628000052p:plain

特に資料を参照してないので造形はイメージです


 

 この直線的だった照明演出はSKY JOURNEYになると一変します。SKY JOURNEYの照明はサビの部分でサスペンションライトとフロアライトを大きく回して演出していました。実はこの時ステージにつけられたモニターでは矢印がぐるぐると回るような映像がカメラ映像に上乗せされていました。この二つは「堂々巡り」「同じところをぐるぐる回って先へ進めない」というイメージを強調します。2つ目のセクションは夢の道半ばで迷う部分であることを考えるとここを照明演出に組み込むことは非常に納得いきます。Daydream Warriorは曲調自体がとてもハードで直線的な照明イメージと相性がいいです。このためサスペンションライトやフロアライトは固定で演出されていました。しかし、キャストがセンターステージへと移動した後、センタステージの縁のLEDライトがセンターステージの周りをぐるぐると回るように光を回していました。(下図参照)またステージの方から目をあげるとステージを囲うようにスタンド席上部に設置された照明ブースから大きな円を作るようにライトが飛ばされていたのも印象的でした。下図では客席の方から見たイメージでしか描けませんでしたが、5thライブの会場ではスタンド席の奥の方に照明棟が組まれていて、スポットライトと細い光を出せるライトが4つ備え付けられていました。ちょうどこの照明棟が会場をぐるっと囲むように合計10棟設置されていて、下図のように細い光を各棟から左右に飛ばすことで全体として大きな丸を作っています。このように2つ目のセクションでは円のイメージが照明演出に取り込まれていました。

f:id:Masake:20190628000810p:plain

客席上部のライトとセンターステージを縁取るLEDライトのイメージ

 

 さて逃走メビウスループの照明に関するメモが全く残っていないのですが、予測不能DrivingについてはAメロの時点でサスペンションライトをサーチライトのようにあちこちへと動かしていました。このサーチライト様に動かす照明演出はMarine Border Parasolとハジマリロードでも使われていました。ここまでは直線と円という規定された動きであったのに対し、サーチライトはどの方向を照らしているのか定まらないという動きです。これは3つ目のセクションで描かれる「自由」を象徴しているのでしょう。どこへ行こうか決まらないけれど、ただの迷走ではなく次行く先を探すという積極性を伴う行為がサーチライトから感じ取れますね。メビウスループから始まるこの3つ目のセクションでのテーマが「迷走→自由」というイメージの刷新であることを考えると、この積極性という違いをしっかりと照明演出に反映させてくるあたり仕事の堅実さが伺えます。

 

 Hop Stop Nonstop!はまた考察に使えそうなメモが全然残っていないのでどのような演出だったかしっかりと思い出せないのですが、その後に披露されたHappy Party Trainではサスペンションライトを回す演出から固定する演出へ変えるのを曲中で行なっていました。この次のMy list to you、未来の僕らは知ってるよでもサスペンションライトを固定した演出をメインに行なっていました。これは回転→固定という演出ですが、ちょうど1, 2番目の照明演出の逆になりますので迷っているところからまた再び夢を見据える状態への変化を示唆していると考えられるでしょう。このセクションはここまでのセトリを映画曲中心の部分へと接続するところなので、「夢を再び追い求める」という演出は映画曲への接続部としてはぴったりではないでしょうか。しかも、セトリ上このセクションでは迷いなどを乗り越えた後での夢を見据えられている状態と考えると、夢はおそらく叶ったのではないかと思えてなりません。というのももしまた探しているのであればサーチライト的な動かし方を使えばいいからです。そこをわざわざ直線のライトを使っているということはしっかりと夢を見られている、自分の進むべき場所がしっかりと見えていることの表れなのではないでしょうか。君の瞳を巡る冒険の目線で捉えるなら、自分の瞳に夢を映すことができた状態だと捉えられます。だからこそみら僕のラストに現れる「we got dream」という歌詞にさらなるパワーを上乗せして、夢は叶うという強いメッセージを生んでいます。

 

 こうして「夢は叶うよ」というメッセージを焼き付けたあと、ライブは映画曲と全巻購入特典へと移ります。別れはあってもそれまでの軌跡は自分の中に残っているというテーマを映画曲で導入し、それぞれの特典曲で卒業を明るく彩っていきます。この辺りは映画の大きなテーマと重なりますし、映画の追体験的なセクションと考えていいでしょう。そして最後にNext Sparklingで「明日は今日より夢に近いはずだよ」、さらには「止まらない 熱くなって 新しい輝きへと手を伸ばそう」と歌ってライブを締めくくるわけですね。この「止まらない 熱くなって」のあたりは冒頭のスリリングワンウェイと重なる訳で、新しい輝きとは新しい夢と解釈できるでしょう。この部分で改めてMarine Border Parasolの「夢は変わって行く」やBrightest Melodyの「新しい夢、繋がってくんだ」という部分が頭に浮かびます。以下無限ループって感じですね笑

 

 まとめ

今回はセトリの解釈を中心にそれに沿う形で照明がどの様に演出に利用されていたかをたどってみました。ライブから時間が経ってしまって覚えていない部分も多い中拙い長文にお付き合いいただいた読者の皆様には感謝いたします。「以下無限ループ」と先ほど書いたのですが、新しい夢で同様のことを繰り返すということなので完全な無限ループではないことが大切ですね。これを書きながら思ったのですが、劇場版のパンフレットで酒井監督も「日常を繰り返している様で少しずつ変わっているということを表現したかった」とインタビューに答えていましたが、夢を叶えては新しい夢を追って、こうして人は成長していくのだろうと考えると今回の5thライブは酒井監督と同じ方向を向いていたのでしょう。そしてそのメッセージの一部でもこうして汲み取れたこと、またもし読者の皆さんがこのブログを読んで夢への希望を新たに持つことの一助になれたのであれば書き手冥利に尽きるというものです。私も夢に向かって突き進むぞという気持ちを強く持てたので、また少しずつ頑張っていこうと思います。

 

それでは皆様、また会う日まで……!!

 

 

おまけ

 ここからはおまけです!やっぱり曲の中で特に印象に残った最高の照明演出について語りたいという私の欲望をここで放出していこうと思います(笑)

 

 今回はBrightest Melodyの照明ですね、何と言っても壁面に投影した光の模様の使い方が良かった。そして香貫山からの朝日を普段観客を煽る時に使ってる大光量のライトでやっていることのわかりみが深かった。

 

 香貫山のシーンは映画でもかなり目立つ演出だったので印象に残っている方も多いのではないでしょうか。ちょうど衣装が変わるところですね。「衣装チェンジやばかった!!」と周囲のみんなが口々に発している中私は一人ステージ上部のライトを見て「うおおおおおおお!!!!!!!!」と叫んでおり、肝心の衣装チェンジの部分を見られなかったのが残念でなりません。Blu-rayはよ!!!!って気持ちでいっぱいです。しかし実はこの香貫山の朝日のライブ演出はライブ前に自分で予想していたのもあって、自分の考えた演出と実際の演出が重なった時の感動はひとしおでした。香貫山のシーンは中央モニターでバッチリ映っていたのですが、そこに妥協せず照明装置でも同様のシーンの再現をしようとする照明さんのお仕事には感服するばかりですね。

 

 そして大光量ライトとは別にもうひとつ、Brightest Melodyの照明演出では壁面に投影するライトが2種類使われていました。舞台照明で言う所のゴボネタってやつですね。ライブ中に壁面にライトで模様を投影すること自体は珍しくないのですが、私が覚えている限りでは2種類同時に壁面に投影したことはなかったので、何か演出上の意図があるのではと勘ぐって注目していました。

f:id:Masake:20190628014007p:plain

Brightest Melody中で使用されていた壁面投影用のライトのイメージ

上図に示した2種類が2塁スタンド席の真上に使われていたのですが、Brightest Melodyで2種類といえばやっぱり3年生と1、2年生なのかなと思って見ていると、やはりそうなのではと思えるような演出が見受けられました。曲の1番では二つのライトは同じ動きをしていたのですが、3年生パートがない2番ではbメロのところで、壁面投影1のライトが止まっているのに壁面投影2はくるくると回っていたんですね。そこをみて壁面投影2のライトはもしかして1、2年生を象徴しているのでは?と思っていた訳です。やっぱりライトが静止していると「アクティブじゃない」感じがするんですよね。学校から卒業してしまえばOGになってしまう訳で、学校の生徒というアクティブな状態ではいられなくなってしまうんですね。そう考えると止まっている壁面投影1は卒業した3年生を、動いている壁面投影2は在学している1、2年生を表している様に印象づけられます。この後のサビでは壁面投影1も回っているので、歌っている人たちにある程度対応させた動きにすることでこの対応関係をより強固なものにしているなと感じます。

 

 そして間奏後の「輝いていたいんだこのまま進もう」の直後、3年生の3人が「Ah, どこへ行っても忘れないよBrightest Melody」と歌い始めるところで壁面投影1のライトが会場の左右へサッとはけたんです。「卒業した!!!!!!!!!!!!」と思いました。3年生が卒業しても一緒に過ごした時間は変わらないし、繋がりは消えないんだよな!!!サンフレなんだよな!!!!!と思ってそれはそれはハチャメチャにエモい演出だなと思いました。ラストのサビでは壁面照明1が再び2塁スタンドの上に戻ってきて、壁面照明2と一緒にくるくる回る演出が使われます。たとえ居場所が離れてしまっても、このBrightest Melodyがみんなの心を繋いでくれるんですねと、やっぱりサンフレなんだよな!!!!とこみ上げる感慨は今でもよく覚えています。映画の文脈だとどうしても1、2年生が「心はいつも3年生も一緒だよ」ということに気づいて前へ進む力を得られた曲として印象付けられてしまうんですが、3年生もまた3人別々の道を歩み新天地での生活に不安もあることだろうと思うんです。映画に映らなかった場面でもしかしたら3年生もまた各々の中に不安を抱えていたかもしれない、それでも前へ進もうという原動力は単に3年生同士の繋がりだけでなく、心では1、2年生もまた力を貸してくれるんだというところから勇気を得ているかもしれない。そんな3年生目線をサラッと照明演出に反映してくる照明さんめちゃくちゃすごくないですか!?!?僕はすごいと思います。

 

 映画のテーマを再構成している様に演出しつつ、細かい部分で映画の再構成にとどまらない演出を見せる照明さん達には感服するばかりです。やっぱり照明演出大好きです…。それと勢いで「サンフレなんだよな!!!」と2度も書いてしまいましたが、何のことだ?と思った方はぜひ4thライブのThank you, Friendsの照明考察を合わせて読んでいただければと思います。リンクを下に貼っておくので、気になった方はぜひそちらからアクセスして見てください。

 

masake.hatenadiary.jp

 

それではここで本当におしまいにしたいと思います。おまけまで付き合っていただいた方には改めて最後で読んでいただいてありがとうございますと謝辞を述べたいと思います。みなさんが「照明って面白いな」と少しでも感じていただければとても嬉しいです。長文失礼いたしました。

 

 

それではまた会う日まで、お元気で!!!

 

Aqours 5thライブ2日目に向けて、Believe Againを楽しみ尽くすための照明の見所

※この記事はAqours 5thライブのセトリの一部とその演出のネタバレを含みます。回避したい方はここでブラウザバックを推奨します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは5thライブ1日目おつかれ様でした。私は友人の連番でライトスタンドのベンチ席に入ることができたのですが、ステージ真横よりもステージ裏に寄った「半見切れ席」のような位置だったので正直今日の夜に照明考察をあげられるのか少し不安視していました。しかし実際ライブが始まってみるとデメリットは中央・サイドモニターの映像とレーザー演出が見えないくらいで、通常の客席よりも広く照明演出を見ることができる位置だったので、その事実も含めてかなりの収穫でした。レーザー演出についても壁に当たったレーザーの光を追うことである程度どのような見え方になるのか予想はできたかなと思います。

f:id:Masake:20190609133907p:plain

今回の席位置

 

 さて今回のライブもスリリング・ワンウェイや恋になりたいAquariumの照明演出の一部が変わっていたりと細かな変化は見られました。ヨーソロードのような安定した演出がある一方でこのような変化が加えられると毎回新鮮な気持ちで曲を聴くことができていいですね。毎度のことながら舞台監督さんや照明機材を実際に操作しているスタッフさん達には頭が上がりません。

 

 しかし明日に2日目を控えた夜に照明考察をあげる以上、今まで照明にあまり目を向けてこなかった読者の方に少しでも照明を見ていただければと思って今回は記事を書こうと思います。そういうわけで今回の記事でピックアップするのは2日目にもやりそうなBelieve Againです。Believe Againは劇場版の照明の再現にとどまらず元のMVを超えるような演出がとても秀逸でした。照明を楽しむ上での要求度でいうとBelive Againはステージを見据えたまま見られるのでハードルは低めです。今まで照明を気にしたことがないという読者の方がBelieve Againの照明演出よかったなと思っていただければ個人的に大成功ですね(笑)

 

 では早速Belive Againの照明演出を紹介していきましょう。Believe Againの映画中での印象といえば画面の両サイドから煌々と画面を貫く白いレーザーとサビ部分での旧函館区公会堂をバックに踊るシーンでしょう(画像探して一番マシだったのがニュースで使われた下の写真でした…)。この曲はモノクロームの引き締まった印象とサビの部分の色味を使った演出とのコントラストが重要な曲です。

f:id:Masake:20190609013048j:plain

Belive Againの照明演出はまさにこのコントラストを維持しつつ、映画では描けなかった高度な演出を行なっていました。モノクロームの要素は白色のライトを点滅させながら様々な方向に飛ばすことで、ロック調な曲の激しさと同時に直線的なソリッドさを演出していました。白色のライトはその光の筋がしっかり見える強さで一直線に放たれていたので映画の作画に見られたレーザーのような直線性をしっかりとさらいつつ、客席のどこから見ても「硬いかんじ」が伝わるように設計されていました。一方でサビの部分ではステージから客席の上方に向けて白、青、ピンクの3色のライトが放たれ上下にゆったりと動いていました。これはサビの部分で旧函館区公会堂に投影された雪の結晶のモチーフと同色ですのでそれを意識しての配色でしょうし、ただ投影するだけでなく上下に動かしたのも劇中で模様が流れるように動いていたのを意識しているのでしょう。もしかしたらこの結晶の模様自体を投影できるような照明装置を作って持ってくるのかもとも思っていましたが、流石にそれはありませんでした(笑)。Believe Againの照明でちゃんとピンク色を入れる所に信頼が置けますよね。この曲はルビィの提案からSaint Snowが、そしてなにより鹿角理亞が再起する曲ですが、その輝きにおけるルビィの働きは決して小さくありません。劇場版を見たときも思いましたが鹿角聖良と黒澤ルビィのどちらが欠けても鹿角理亞は立ち直ることができなかったでしょう。その再出発におけるルビィの貢献は照明だけでなく、理亞ちゃんの衣装にのみピンクが使用されているところからも伺えます。

 

 さてしかしここでとどまらないのがこの曲の照明演出のすごい所だといえます。ステージからのライトですでに色味は加わっていますが、このとき同様の配色のレーザーを使ってライトだけでは物足りない色味を補填しています。レーザー自体は直線的なのですが、それを帯状に展開することで柔らかさを両立していました。そしてこのレーザーにのみ上の3色に加えてエメラルドグリーンに近い緑色が織り込まれていました。なぜここにきて元の映像にない色を加えるのか、エメラルドグリーン以外の色であれば私はその目的を理解できなかったでしょう。しかしSaint Snow黒澤ルビィ、エメラルドグリーンから連想されるAwaken the powerのAqoursの衣装というキーワードと共にこの疑問は解消されます。Believe Againの照明にエメラルドグリーンの照明をあえて加えることによって、ただBelieve Againを演出するだけでなくそこに関連する重要な曲としてのAwaken the powerを見事にダブルイメージとして織り込んでいるのです。

f:id:Masake:20190609020409j:plain

Aqoursメンバーの衣装の主色は明るいグリーンなんですね

Awaken the powerはいわば、妹たちが姉たちから巣立ちの一歩を踏み出した曲。その一歩は自立した姉のものと比べてひどくか弱く心もとない一歩であるけれども互いを支え合うことでその一歩を確実なものへと変えていく、そんな成長が見られる背景を持った曲です。Believe Againが披露されるラブライブ延長戦は、姉の間のやりとりを妹であるルビィが否定し自ら提案し実現へと運んだ企画です。Awaken the powerでの一歩が周りに支えられて踏み出した一歩であるとすれば、Believe Againの一歩は周囲の人を踏みとどまらせるより自立度の高い一歩だと言えるでしょう。つまりこの2曲を軸に描かれる物語はAwaken the power以前に見られる姉-妹の姉妹関係が2組という構造から姉-姉と妹-妹の関係性への構造的な変化であり、これこそがBelieve Againの最大の魅力の一つです。映画の中だけで完結しない劇場での感動を表現するためにはAwaken the powerの要素をBelieve Againの演出の中に組み込むことはむしろ必須と考えられるほどに重要な演出だと言えるでしょう。曲調や劇中での演出を主軸にして曲の音楽的な魅力や映像との視覚的な調和を前面に出しつつも、それを邪魔しない程度に物語的な視点を演出に織り込むことで劇場で見たときの感動すらも表現しようとする。こういった細かい部分に仕掛けられた連想の鍵を拾っていくことは照明を通して曲の楽しみを深める重要な要素だと思います。

 

 2日目のライブでもBelieve Againはきっとやるだろうと思いますので、ぜひこれを見るときにはぜひ映画のシーンだけでなくそこに至るまでのルビィや理亞の成長、そしてそれを見守るダイヤさんと聖良さんの心情に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。照明の演出に散りばめられたヒントをきっかけにライブの盛り上がりの中でもラブライブサンシャインの物語に触れてより重層的な楽しみ方をするきっかけになれば嬉しいです。

 

 ライブ2日目もAqoursSaint Snowのみんなに負けないくらい楽しんで、人生の中の最高の一瞬にしていきましょう!Day2がまた最高の1日になることを祈って今回の記事を締めくくらせていただきます。

 

ダイスキだったらダイジョウブの照明演出のバランス感がとても良いというお話

お久しぶりです、初めましての方はお初にお目にかかります。まさけです。

 

 照明演出のお話をするというニッチな目的でこのブログを開設したわけですが、そもそも「ライブがないことには照明演出を語ることができない!!」ということでどうしても更新をしないまま長い時間が過ぎる命運を背負ってしまいました。

 アジアツアーは台北公演を新宿のLVで見ていたのですが、LVで照明演出をみるのはかなり骨が折れました。当然ですが基本的にカメラさんがキャストの方々を抜いていくので照明演出を見ようと思ってもライトがどう動いているかとかはあまり見えないんですよね。結果、自分が以前見た照明演出やら画面の端に映るライトの動きやら曲調やらを考慮して照明装置の動きを事前に予想(そして一瞬引きで映った時には確認)したり、画面の端に映り込んだ床に当たった光の色を確認したりと現地の数倍頭を使ったのにあまり成果が得られない内容となってしまいました。とはいえ普段よりもたくさんキャストさんを見られたのでその部分はLVのいいところだなと思います笑

 しかし照明演出をより親しみやすいものにできるようにとこのブログを開設したわけですし、できることならもっと更新頻度をあげられればなあと考えています。そこで現在Blu-ray映像で照明演出を見られないか画策中でございます(需要あんのかこれ)。できた暁には同人誌にでもしようと思うので興味のある方は続報をお待ちください!

 

 

 さて本日はアジアツアーの3ヶ所目、TOKYO公演を友達の連番のおかげで現地参戦してきたわけですが、今回も素晴らしい照明演出が各所に見られて大満足でした。本題のダイスキだったらダイジョウブに入る前に、夢で夜空を照らしたいの照明についてすこしだけ…。なんといっても配色がとてもよかった。アニメ映像では夜から朝焼けへと移り変わる空の色が背景に広がったりそこに浮かぶランタンがとても綺麗な曲ですが、照明ではその夜空と朝焼けの空が見事に表現されていました。ステージ上に設置した固定のライトから青の光をメインで当てることで全体的に落ち着いた夜の色調を作り出し、そこにステージ前方からオレンジ色のライトを重ねて当てることで少し紫がかった色に調整していました。これが夜から朝方にかけての空の色となっていて曲の世界観への移入を促していましたね。私はこの演出を見た時「これがかつて清少納言枕草子に記した、夜明けの紫がかった空なのか」とその美しさに感動しました。また青だけでは光量が足りないので会場後方のスポットライトでキャストを照らして、ステージ真上のライトもオレンジ色にした光を弱く当てることで明る過ぎずしかしキャストがしっかりと観客から見えるように明るさが調整されていました。色調と光量の二つの側面から曲の雰囲気をしっかり形作った上で見やすさにもしっかりと配慮しているところはまさにプロの仕事だなと感じます。

 またライトの動かし方もゆったり左右に揺らす動きを基調に光の模様を会場の壁や天井に投影して回すなどBPMの低い曲調に寄せながら単調にならないように気が配られており仕事の細かさが伺えます。ちなみにサビの時後ろを振り向くと後方の壁面にはピンク色の光の点を四角に並べた光がいくつも並んでいてそれが回っていたのですが、その光景が朝焼けの海を写真に撮った時の水面のきらめきやフレアのようでこちらもまた非常に美しかった。演奏中後ろを振り向くことはあまりないとは思いますが、あくまでも会場全体を装飾している照明さんの仕事は観客だけでなくAqoursのキャストの皆さんにもまた綺麗な光景を見せているんですね。

 このほかにもミライチケットで下から前へ手をあげる振り付けに合わせてステージ上真上のサステインライトを一斉に下から前に飛ばしたり、未熟ドリーマーでは観客のコールを促す時に使う大光量のライトを使って花火の光を表現したりと曲への没入感を強める演出がなされていました。想いよひとつになれでも何かものすごくエモい演出があったような気がするんですが、とてもエモかったことだけが記憶に残って何がエモかったのかさっぱり忘れてしまいましたw やっぱメモ取るのは必須かもしれませんね笑

 

 上に書いた以外にもたくさんいい光の演出はあったんですが、そろそろ本題の「ダイスキだったらダイジョウブ」に移るとしましょう。ダイダイの照明の良さを一言で表すのなら、「素人感を適度に演出できるプロのバランス感覚」とまとめることができます。

 まずダイダイではどのような照明演出がなされていたかを振り返っていきましょう。アニメで放送された楽曲ということもあって全体的な色調は白熱球の色を基調に明るすぎないように調整されていました。会場後方からスポットライトでキャストさんを照らすことによってステージの照明を使わなくとも光量的に十分な見易さを確保していました。ちなみに稼働していたスポットライトは6本だったので一人につき2本ず当たっていたと思います。この後ろからスポットライトで照らしている様子は1期3話のむつといつきを思わせました。(本数は違いますが笑)こういうところでめちゃくちゃエモいと思っちゃうんですよね。

 さて固定ライトとスポットライトでキャストが十分に見える光量を確保できているのでステージ周りの動かせるライトを演出に使う準備が整いました。サステインライトやステージ上の可動ライトは蜜柑色、水色、桜色の3色を切り替えながら四方八方に光を飛ばして、ステージ上にいるキャラクターに寄せた演出となっていました。メンバーカラーに照明を揃えるのはまさに王道の演出、実家のような安心感を与えつつ動きのある伴奏にも対応できる照明パターンをここに持ってくるのは伴奏に疾走感のあるところとゆったりとしたテンポのところの両方があるダイダイの照明にはもってこいのセッティングと言えるでしょう。

 しかし、ここまで曲を盛り上げる舞台が整っているからこそサビでの照明演出に違和感を覚えたのは間違いありません。Aメロの部分でBPMに合わせるようにライトの色を切り替え、Bメロではライトの向きを変えて再び固定することでゆったりとした曲調に沿うような照明になっていました。ここまで曲調に寄せているのであればサビで再び盛り上がるところではサステインライトを上下左右に回すなり、上下の動きを繰り返してウェーブのような効果を狙うなり、サビの盛り上がりに寄せた照明演出がくるだろうと予想していました。ですが、実際の照明演出は再び照明の向きを変えた後に固定して、BPMに合わせたライトの点滅によって動きを出していました。壁面に模様を投影する照明も特に動員していなかったので奇しくもAメロの照明演出と似た演出となっていました。私の予想に反して、照明を回すように動かすことで動きを出したのはサビではなく間奏の部分でのことでした。サビの部分で照明を回してしまうと間奏部分での動きの出し方をまた別に考える必要が生じかねないので異なるモードで動きを演出することは合理的ではありますが、盛り上がりの強さを考えるとサビで動かしても良かったのではないかと考えられます。

 さて、以上の照明演出を踏まえて演出を納得できる形で解釈しようとすると、サビで照明を回さなかったことにむしろ明確な理由があると考えれば良さそうです。そしてこの答えは「ダイスキだったらダイジョウブはどんな背景を持った曲か」というところに見つけられました。この曲が放送されたのはアニメ1期の第3話、当時まだメンバーが3人だったAqoursの初ステージの曲でした。初ステージの曲という要素は振り付けにも反映されていて、比較的単純な振り付けが多く使われています。何かを始めたばかりの頃って当人としてはとても頑張っているんだけれども、いざ成果物として人に見せるとみんなはプロが作ったものをすでに見ているというのもあってどうしても見劣りしてしまうということがあります。ただ見ているだけだったものを自分でやってみるということの難しさは、何か新しいことに自分で挑戦してみたことのある人であれば大いに共感することでしょう。「ダイスキだったらダイジョウブ」という曲にはまさにこの初心者ならではの一生懸命さという魅力があります。パフォーマンスを構成するパーツはそれほど洗練されたものではないかもしれない、しかしその荒削りな中に確かな情熱を感じる時人は大きく心を動かされるものです。そんな荒削りな中の情熱は千歌たちだけのものだったのか?そんなことはありません。千歌たちをサポートすると決めたよいつむトリオもまた初めての裏方だったのではないでしょうか?ここまで言えばもうわかってしまいますね。そう、ライブにおける点滅を多用した照明は、振り付けと同様にAqoursの初ライブ感を演出するのみならず、Aqoursの初ライブを裏方で支えるよいつむトリオの初ライブの演出という意味合いを帯びているのです。実際照明を回す演出はたくさんのライトでやるほどに躍動感が出ますが、当時のAqoursのサポート体制ではおよそ実現不可能でしょう。また正確にライトを動かすことも機械やコンピュータの力を借りないことには難しいです。その点、ライトを点滅させるという演出はむつといつきの力でもできますし、ライブ演出上も動きが出てよりキャストの動きを際立たせることができます。ここまで考えていたんだとしたら、舞台監督さん素晴らしすぎる……。こんなエモい演出どうやったら思いつくんでしょうか。

 さて上に長々と書いたようなAqoursとよいつむトリオの初ライブという解釈を得た私は曲の演奏中に高まり散らしていたわけですが、ここに至ってさらに照明演出のプロフェッショナルな仕事に心を撃ち抜かれます。上にも書いたように荒削りな中の情熱とは心を動かすものですが、その演出をそのままやってしまうと今度はライブコンサートとしてパフォーマンスを見たときに少し物足りなくなってしまいます。曲自体がアニメという背景を背負っている一方で、実際にはライブパフォーマンスとして観客を楽しませなければならない。この矛盾した状況の打破に一役買っているのが照明でした。アニメでは見られなかった照明演出がライブにおいて見られるのは普通のことなのですが、メンバーカラーを次々に映し出す照明だけがアニメと異なるわけではありませんでした。照明演出の振り返りのところでも触れたように間奏部分では照明が回ります。つまりむつやいつきにはできなかったであろう演出が使われています。アニメという背景から乖離して実際のパフォーマンスの完成度という観点から考えると、Aメロ~サビにかけては照明がほとんど固定されているので間奏で照明を動かすことによって演出の中に緩急が生まれ演出が飽きのこないものになります。アニメと密接に関わりあってしまう歌詞という要素があるAメロ~サビにかけては曲調に寄せつつもアニメの背景を意識した照明演出をとる一方で、歌詞のない間奏の部分ではアニメという背景から離脱してライブパフォーマンスとしての完成度を上げることを意識する。稚拙さとパフォーマンスとしての完成度という一見矛盾する二つの要素を絶妙なバランス感覚で照明さんは達成していたんですね。ライブ中曲の2番が終わったところでこれに気づいた私はそりゃあもう高まるなんてものじゃありませんでした。曲が終わった瞬間に連番していた友達にオタク特有の早口で話しかけてしまいました。

 

 あいも変わらず長々と書いてしまいましたが、このようにダイスキだったらダイジョウブという曲を最大限にライブ用の曲として演出した舞台監督さんと照明さんにはただただ脱帽するばかりです。これからもライブを見るたびにこういう発見があるんだろうなと思うと心が踊りますね!

 

 Aqours史上初のアジアツアーも残すところ韓国のみとなりましたが、嬉しいことにアジアツアーはセトリがほとんど変わりません。もし韓国公演を現地で見る方が読者の中にいたのなら、ぜひダイスキだったらダイジョウブの演奏中にほんの少しだけでも照明演出に意識を向けていただけたらと思います。また現地ではないけどLVで参戦!という方も、カメラさんが照明を抜いてくれることは望むべくもありませんが、キャストの後ろに映り込んだステージの色調やライトの色がアニメとリンクしているかもしれないと一瞬気にしていただけたのなら照明推し冥利につきます。

 

 アジアツアーの先には5thも控えていますし、個人的にはBlu-rayで楽しむ照明演出企画の実現も頑張らねばなと思います。まだまだやることが尽きないラブライブサンシャインのこれからの展開に輝かしい未来があることと、私に何とか5thライブの現地チケットが舞い降りてくることを願って今回のブログを締めたいと思います。

 

それではみなさん、また会う日までお元気で!

ラブライブ!サンシャイン!!考察 〜過去から未来へと紡ぐ物語〜

この考察は劇場版のネタバレを含みます!劇場版をまだ見ていなくて新鮮な気持ちで鑑賞したい!という方はブラウザバック推奨です!

 

↓ 記事までしばらくスクロールしてください ↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では始めていきたいと思います。

まずはラブライブサンシャイン劇場版、公開おめでとうございます!!!!!!誰に向けて言ってるのかはっきりしないところはさておき、ついに公開されましたね!!私は公開初日に1回見てその後ちまちまとみて3回ですが、知り合いには初日に3回見ている猛者もいてすごいなあと思う限りです。劇場版の内容については賛否両論あるようですが、私個人はとてもよくできた作品だなと思っています。酒井監督がラブライブサンシャインという作品を通してやりたかったことがよくまとまっていたのではないかと。とはいえまだまだ汲み取り切れていない部分もあるんだろうなぁと強く感じますしこれからもまだまだ劇場版を見にいく予定ですが、その前に現段階で思っていることをまとめてさらなる考察の準備ができればと思っています。

 

さて、今回タイトルを「ラブライブ!サンシャイン!!考察 〜過去から未来へと紡ぐ物語〜」としたのは、アニメ1期2期も含めた全体を通してこの3回劇場版を見たからですね。副題の部分は私が劇場版まで見たところでラブライブサンシャインという作品を貫く大きなテーマだと私が感じたものです。ここからは(1)アニメシリーズでのテーマ、(2)劇場版における過去からの解放、と見ていき最後にちょっとだけ(3)ラブライブサンシャインにおける黒澤ルビィでルビィちゃんの象徴的な部分について触れようかなと思います!総時数は約6500字でそれなりに長いのでお気をつけください!それではアニメの振り返りから始めていきましょう!

 

アニメシリーズでのテーマ

ラブライブサンシャインのアニメシリーズでは「過去からの解放」が強く描かれていたように思います。それはAqoursというグループにおいてもAqoursのメンバーというレベルにおいても一貫して描かれていました。

 

例えば、グループとしてのAqoursを考えてみればμ’sがその過去に当たります。これはダイヤさんがμ’sのことをスクールアイドルの伝説・聖典と述べている点にもよく表れているでしょう。伝説も聖典も過去の偉業の記録であり、ラブライブ!無印で描かれたμ’sの物語は偉業たりえるサクセスストーリーでした。またμ’sが3年生の卒業とともにグループを終わりにするといった決断やラブライブサンシャイン1期12話での「μ’sが何も残していかなかった」と言った話もμ’sという過去の断絶性を物語っています。現在とは断絶した過去、これはまさに私たちが伝説や聖典といった言葉から想像するものではないでしょうか。

 

そんな伝説としてのμ’sを追い求める形で始まったAqoursは1期を通してμ’sのようにという言葉が多く出てきます。しかしμ’sを見て思い描いていたほどには事がうまく運ばないAqours。「くやしくないの?」の回で千歌ちゃんがμ’sのポスターに手を伸ばすものの届かず、そのまま手を堕してしまうシーンはμ’sがたどった道筋とAqoursがたどった道筋の違いに千歌ちゃんが頭を悩ませているシーンだと解釈できます。このμ’sAqoursの違いの答えを求めた千歌ちゃんが1期12話でたどり着いたのが「μ’sを追いかけてはいけない」という事。過去の伝説をなぞるのではなくAqoursは「Aqoursの道」を進まなければならない、これはAqoursの過去からの解放の一つの表れであるのと同時に、ラブライブ無印という作品の後にラブライブサンシャインという作品で指揮をとる酒井監督の宣誓でもあるように思えました。

 

テレビアニメ2期では1期での過去からの解放を踏まえて「μ’sという過去から解放されるとはどういうことか?」すなわち「Aqoursの輝きとは何か」が一つの軸となって物語が展開していきます。Aqoursの活動理由の一つでもあった廃校阻止は序盤では輝きを得るための必須事項として掲げられていましたが、これはあと一歩のところで達成できず、千歌たちは輝きのありかを模索します。そしてラブライブで優勝すれば輝きが見つかるとするも、13話で「輝きはあったんだよね?」とつぶやく千歌ちゃんに対してお母さんが「本当にそう思ってる?」と問いただした時、千歌ちゃんの顔には不満がにじみ出ていました。そして最後のWonderful Storiesで輝きは今までの時間がそうだったんだという答えを得ます。この2期の流れでは1期のμ’sを追いかけないという宣言とは裏腹にどこかでμ’sを追いかけてしまっているAqoursと決してμ’sの物語をなぞらせない酒井監督の意地が見えます。それがあってこそμ’sとは異なる形でAqoursだけの輝きを見つけAqoursμ’sという過去から解放されます。

 

Aqoursメンバーのレベルに目を向けると1期において過去という束縛からの解放というテーマは様々なところで見受けられます。一番目立つところで言えば梨子ちゃんがピアノをまた弾けるようになった事。想いよひとつになれでわざわざ梨子ちゃんを送り出した事にはコンクールでピアノを弾けなかった過去からの解放を描いています。また3年生の加入回では1年生のころのすれ違いを解消する事で前に進むことができました。曜ちゃんであれば千歌ちゃんと一緒にという昔からの願いが強すぎて逆に枷になってしまっていたのを友情ヨーソロー回で断ち切りましたし、千歌ちゃんは何を始めてもすぐ辞めてしまっていた自分から諦めずに挑戦する高海千歌に生まれ変わっていました。このように過去とは違う今を描くことでメンバーのレベルでも過去からの解放は十分に描かれていました。

 

こうしたアニメシリーズでの過去からの解放というテーマを踏まえて劇場版ではどのようなテーマが描かれていたのか、今度はそちらに目を向けていきましょう。

 

劇場版における過去からの解放

ラブライブサンシャイン劇場版をアニメシリーズとのつながりで見てみると劇場版の中にも過去という要素はしっかり描かれていますし、アニメシリーズでは描ききれていなかった部分を劇場版はしっかりとさらっていたように思います。ではあらすじを見ながら過去に関わる要素がどのように描き出されていたかを見ていきましょう!

 

映画の冒頭は子供時代のようちかが紙飛行機を飛ばしているシーンから始まりますね。しかしここに梨子ちゃんが同じ場所に居合わせている事も驚きですし、千歌ちゃんが諦めずに飛行機を飛ばせるところ、もっと遠くまで飛ぶと断言するところもアニメシリーズでの千歌ちゃんの過去を考えると信じられないほどにポジティブですね。なのでこれは実際の過去の描写であると考えるよりも何らかの象徴的な表現と捉えるべきでしょう。この冒頭の表現はさいごにかいしゅうされるので一旦ここで保留にして先を見ていきましょう。

 

3年生の卒業式も終わり次の学校でスクールアイドルAqoursを続けていくことを決めた1・2年生の6人は、6人でのAqoursの輝きとはなんなのかをまた探し始めます。そんな折に新しい学校でのライブの機会を得た6人は好機とばかりにライブを行いますが、そこで失敗してしまいます。ここで千歌ちゃんのヘアピンが落ちる描写についてはまた考察したいですね〜笑(まだできてない)ただ「6人って意外と少ない」という言葉にも表れているように9人のAqoursや3年生への依存が見られます。つまり1期でのAqoursの過去がμ’sであるように、劇場版では9人のAqoursが3年生の卒業とともに過去になります。ラブライブ優勝を果たしたAqoursからどのような解放を経て新生Aqoursとなるのかそれが劇場版での大きなテーマだと言えるでしょう。これに対しても終盤で答えが出ますね。

 

さて進む道を迷ったAqoursは聖良さんのすすめもありイタリアへ3年生に会いにいきます。ここで3年生が逃げてきた鞠莉さんのお母さんという過去が出てきますね。鞠莉さんの自由を奪おうとしている描写からもお母さんは過去による束縛のモチーフだと言えます。そしてフィレンツェにてついにその母親に捕まってしまった鞠莉さんは母親から逃げるのではなく母親と決着をつけることを選びます。そこで行なったのがスペイン広場でのライブであり、これによって鞠莉さんは母親と和解、過去を受け入れた上で自身の未来を手に入れました。つまりここで描かれているのは過去から逃げるのではなく過去のやり残しを解消し受け入れることでそしてこの様子を見て千歌ちゃんは「少し分かってきた」と言います。

 

イタリアから帰ると静真高校の生徒でAqoursに協力する生徒が少し増えます。ここできたのは善子ちゃんの中学時代の同級生。最初のライブの時と同じく善子はここでも逃げようとしますが、それを花丸ちゃんと梨子ちゃんが止めて善子ちゃんは中学の同級生と一緒に写真を撮りさらには握手までします。ここもまた小さいながら善子が過去を受け入れたことを描いていますね。その次に理亞ちゃんの新しいスクールアイドルがうまくいっていないことがわかります。この時点で過去を受け入れることで前に進むことができると理解していたAqoursは同じアプローチで理亞ちゃんを助けようとします。理亞ちゃんはラブライブ地区予選でのSaint Snowの失敗を引きずり、姉である聖良さんの夢を今度は自分が叶えるのだと空回りしてしまっていました。過去から逃げていた鞠莉さんとは対照的に過去を気にしすぎていたからこそ過去に縛られている状態ですね。そこにラブライブ勝戦の延長戦を行うことで理亞ちゃんが叶えられなかった夢を一つ叶えて、そこで聖良さんから理亞ちゃんに伝えられたのが「(Saint Snowを)追わなくていい」ということでした。Saint Snowでのやり残しを解消し、Saint Snowとしての時間を思い出として受け入れることで前に進むことができました。

 

ラブライブ延長戦を終えたAqoursは再び6人でのライブの準備を進めます。ここで多くの静真高校の生徒たちが準備の手伝いに加わります。ライブの準備をむつちゃんたちがやっておくということでAqoursのメンバーは再び浦の星女学院へと足を運びます。そこで少し開いた校門を千歌ちゃんが閉じ、最後には全員が笑顔で浦の星を見つめます。ここも印象的なシーンで、閉校祭の時はみんな泣いてしまっていたのでその時のやり残しをしっかりとここで解消していますね。このシーンで花丸ちゃんが浦の星がなくなっていないということを口にします。ここでは浦の星女学院が過去、静真高校が未来という対比がなされているわけですが、過去が消えないで残り続けるものであることを述べています。だからこそ、静真高校でのAqoursのスタートはゼロからのスタートではないんですね。「今までやってきたことは決して消えない」CMで千歌ちゃんがいっていることとも一致します。

 

ラストシーンのライブではAqoursのメンバーが番号を言っていくところで3年生の声がしっかり演出されます。そしてゼロから1へだったのが1からその先へへと円陣のコールも変わっています。過去は過去として自分たちを構成するものと受け入れた上で現在の輝きを追って未来へと歩みを進める、これこそ酒井監督が今回の劇場版を通してやりたかったことなのでしょう。ライブシーンの演出では舞台に立つ6人の衣装に片翼があしらわれており、6人が一つとなって未来へ羽ばたくということが示唆されています。そして2番では3年生が6人の背後に表れ歌います。背後という過去のメタファーの位置に表れた3年生には両翼の衣装があしらわれ、それぞれの未来へと羽ばたいていく3年生を暗示しています。9人が9人であった時間を胸に宿してその先の未来へと羽ばたいていく、過去とは断絶するものではなく現在を経て未来へと通じていくものなんだということが酒井監督からのメッセージだったのではないでしょうか。ライブが終わった後の最後のシーンにはAqoursの9人が幼少期の姿で一緒に座っている絵が出てきます。9人でいた時間がみんなにとって過去になった演出だと私は捉えています。全員幼少期の姿で描かれていることからおそらくAqoursのメンバー全員が高校を卒業したのではないでしょうか。

 

そしてスタッフロールの後には波打ち際に現れるAqoursの文字が。これはアニメ2期11話で波に流される演出の後現れることはありませんでした。しかし今回の映画のテーマを考えればAqoursの思い出はみんなの心に残り続けていきます。そしてスタッフロール周辺でのシャボン玉と虹の演出、「君のこころは輝いているかい?」を思わせる画面を作った後にAqoursの「聖地」を訪れたファンの心のきらめきがそこにはありました。私はこれを見た時、Aqoursが観客一人一人に向けて「次は君が輝く番だ!!」と背中を押すメッセージだと、それを伝えるための酒井監督の演出なんだと強く感じました。

 

熱に任せて長々と書いてしまいましたが、上の内容をまとめると今回の劇場版では過去を受け入れて未来へと線をつなぐ、そういったテーマだったのかなと思います。このテーマを捕らえようと思うと、過去からの解放だけではなくもう一つ、月ちゃん一人から始まった静真高校のAqoursへの応援がだんだんと広まって最終的には静真高校の多くの生徒へと伝播したことも必要ではあります。月とは太陽の光を反射して届けるもの。太陽の光(サンシャイン)という輝きが月ちゃんから他の生徒へそしてさらに多くの生徒へと広がったように、この映画で受け取った輝きを元に今度は私たちも輝く番なんじゃないかと思っています。

 

ラブライブサンシャインにおける黒澤ルビィ

最後に劇場版まで通して見て思った黒澤ルビィの役割についてさらっと書いてみようかなと思います。

 

上で述べたようにラブライブサンシャインは過去からの解放を描く物語だと捉えられます。μ’sという大きな先達の後に続く形で始まったAqoursの物語は次第にμ’sから離れ自分自身の物語を紡ぐようになります。これと同じことが姉妹設定を持つ黒澤ルビィや鹿角理亞を通しても語られているのでしょう。

 

アニメ2期8話のHAKODATEが配置されたのは廃校を阻止できずμ’sの物語をなぞりきれなかった直後でした。そこで1期4話につづいてまた姉の元を離れて自ら行動する黒澤ルビィと鹿角理亞の不安はμ’sという道しるべを失ったAqoursの姿と重なります。同様のことが映画でもありますね。ダイヤさんが髪を拭こうとするのを優しく止めるルビィちゃん、自らライブの場所は1年生で決めると進言するルビィちゃん、そして姉とのやり残した夢を叶え自分の道を進むと決めた理亞ちゃん、これらのイメージは単なる個人の成長という描写だけでなく、Aqoursというスクールアイドルが、鹿角理亞というスクールアイドルが3年生がいた時の自分たちという過去を繰り返すのではなく自らの物語を進むという自立の象徴なんだと思っています。だからこそラブライブサンシャインの劇場版でありながらSaint Snowの過去を清算する描写が必要だったのでしょう。

 

この考察を書きながら、酒井監督すげぇ!酒井監督すげぇ!と幾度となく思いました。また劇場版を見たら思うところもあるのでしょう。今回はここで考察を切り上げます。これから何度目かの劇場版を見にいく皆さんが映画を楽しむ一助になればいいなと願っております!そして皆さん一人一人が自分の納得のいく映画の解釈を持つための参考になったらいいかなと思っております!

 

ここまで約6300字、長々とお付き合いありがとうございました!また記事を書くときまで、しばしのお別れとしましょう!

Aqours4thライブのテーマの視点からThank you, FRIENDS!!の照明を考えるお話

はじめに、この記事はネタバレを含むのでそちらを避けたい方はブラウザバックを推奨します。

 

 

↓スクロールすると記事になります↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めてこういうブログを書くのでこれくらいのスクロールで足りるのか少し心配ですが、始めましょう。

 

まずは4thライブお疲れ様でした!Sailing to the Sunshine!ってタイトル、サントラのJourney to the Sunshine!にめっちゃ似てない?って思っていたらまさかのオーケストラ参入だったり、想いよひとつになれではりきゃこがダンスに加わったりとオタク的にはかなり刺さる演出のオンパレードで正直1日目は過去一番に泣きました。また2日目の終わりの挨拶ではあんちゃんがカメラさん、美術さん、そして照明さんとライブを行うにあたって協力してくれているスタッフさんたちへの感謝を述べて会場からの拍手を送るなど、あらためてラブライブは「みんなで叶える物語」なんだなぁと強く感じることができました。5thライブやアジアツアーも決まり、劇場版公開も見えてきてますます盛り上がりを見せていくんだろうなという気持ちが絶えません。

 

そんな余韻がいまだに強いですが、こうして余韻が強い間こそ考察を書くべきなんだ!と初めてながら意気込んでおります。

 

さて、タイトルにも書きましたが、「Aqour4thライブのテーマの視点からThank you, FRIENDS!!の照明を考える」ということでこれからは下の目次に沿って話を展開していこうと思います。

 

目次:

1. 4thライブのテーマは何だったのか

2. Thank you, FRIENDS!!曲中での照明装置の動き方とその考察

 

3. 劇場版の内容と照明演出の関わり

4. おわりに

 

では早速始めていきましょう。

 

1. 4thライブのテーマは何だったのか

これに関しては他の方もおっしゃっているのでツイッターで見たなどのご意見あると思います。わたしもそういうツイートを見たり友人からそういう話を聞く中で確かにと思う部分に多く出会いました。

 

さてしかしここで結論から言いますと、私は4thライブにおいてはテーマが2つ設定されていたのではないかと考えています。

 

ひとつ目のテーマは「感謝とプレゼント」。この文言は私の友達からの受け売りです(笑)4thライブのテーマソングはなんといっても今回考察の対象にもなっているThank you, FRIENDS!!です。その歌詞の中には感謝の気持ちの言葉が散りばめられており、「人生にはときどきびっくりなプレゼントがある」とも言っています。ライブ内容で言えば聖なる日の祈りを歌う前のMCにあった「早めのクリスマスプレゼント」であったりNo. 10という曲であったりによく表れていると思います。また2日目のダブルアンコールではキャストの方々の多くが涙ぐんでいましたし、これはスタッフと観客からキャストへのサプライズプレゼントと捉えることもできると思います。MCでは1日目にはAqoursちゃんたちがキャストをドームへ連れてきてくれたという趣旨の発言があり、2日目ではあんちゃんがスタッフさんへの拍手を求めたところもやはり感謝というテーマにしっかりと沿っているなと感じました。このようにライブを通して「感謝とプレゼント」という要素は多く散りばめられているなと感じました。

 

ではふたつ目のテーマはとは何か、これは照明演出を考察していく中で浮かんできたものでもあります。それは「アニメ1期2期を俯瞰して物語を整理し、劇場版への橋渡しをすること」だと思っています。アニメ1期の後に行われた1stライブ、アニメ2期の後に行われた3rdライブでは主にアニメの中での展開に沿った振り返りの映像が流れライブのセトリもそれを意識したものになっていたと思います。それに対して4thライブでは幕間にアニメを振り返る映像が3度、浦の星交響楽団の演奏とともに流れました。1つめの映像では千歌ちゃんと梨子ちゃんの出会いに始まり各メンバーの加入回の映像が使われており、ここでは出会いの物語としてのラブライブサンシャインが描かれていました。2つめではAqoursメンバーみんなで海で遊んだり、練習をしたり作曲したり、あるいはAqours結成前にメンバー間でどのような関わりがあったかを描いた映像が集められていました。すなわちAqoursの絆の物語としてのラブライブサンシャインと捉えられます。最後はラブライブという大会にのぞむ競技者としてのAqoursの姿が0という大会の結果などを含めて表されていました。

 

このように各映像では1期2期をとおして観点別にラブライブサンシャインの物語を整理して、いわば物語の総決算をしていたと言えます。3rdライブツアーからあまり時間をおかない11月にライブを行ったことは映画の公開前にライブを行いたかったという意図があったのではないでしょうか。

 

上のように2つのテーマがあったのではないかと考えた上で、2つめのテーマを念頭に照明演出を見ていきましょう。

 

2. Thank you, FRIENDS!!曲中での照明装置の動き方

Thank you, FRIENDS!!で稼働していた照明装置は2つ、ステージの上や先端など様々に設置されたスポットライトとステージ装飾のふちどりをするように設置されたネオンライトのような細いライトです。この記事では便宜上前者を「ライト」後者を「ふちどりライト」と呼ぶことにします。

 

ではまずライトの方から見ていきましょう。

Thank you, FRIENDS!!はBPMもあまり速い曲ではなく落ち着いた曲調ということもありライトの動きは左右に大きくゆったりと動く、そんな動き方をしていました。しかしただ左右に動いていたわけではなくライトが動くタイミングをずらしてウェーブを作るように動いていました。この動かし方だけであれば曲調やBPMを考えればごくごく自然な照明装置の動かし方と言えます。しかしこの時の動き方は常にステージ側から見て右側(つまり観客席中央から見ると左側)のライトが常に動きの起点となるように動いていました。このように動かすと右から左へライトを動かすときは光が扇状に広がり見栄えとしても綺麗なのですが、左から右へ動く際には光が交差してしまって照明的な見栄えは劣ります。

 

そこでこの動かし方にはそれなりの意図があってのことではないかと考えて見ました。すると、ライト一つ一つをAqoursのメンバーだと考えたとき光の交点は出会いの象徴だと考えることができます。実際ライトは交点で重なる光の数が増えても交点の数は常に1つになるように動いていました。この点を踏まえるとますます光の交点はAqoursのメンバーが出会い集まっていく様を描いていると考えられるでしょう。さらに光の交点は観客席側からみてひだりから右へと動いていきます。左から右というのは我々が時間軸を書く際に常に左を過去に右を未来にするため方向自体がメタファーを持ちます。光の交点は左から右へ動くに連れ交わる光が増えるので、ここはAqoursのメンバーが時間を追って増えていく過程を示していると考えられるでしょう。では右に移動しきった光はどうなるかというと、今度は交点から一つづつ光が離れていきます。光の交点が出会いを示すのなら光がそこから離れることは別れを表していると捉えるべきでしょう。すなわち3年生の卒業です。3年生の次は2年生、その次は1年生と卒業していき各メンバーはそれぞれの道を歩んでいきます。同じ時を共有したメンバーがそれぞれの未来へと散っていく様はまさに扇状の照明にピッタリと当てはまるように思います。

 

ではAqoursの出会いはなくなってしまったのでしょうか?そんなことはありません。ライトから伸びた光を私は先ほどメンバーの未来と表現しました。では扇状に広がったライトの光を仮にライトの後ろまで伸ばしたらどうなるか?もちろん重なりますね。つまりAqoursの一人ひとりがそれぞれの未来へ歩みを進めはじめても過去での繋がりが永遠に彼女たちを繋ぎ止めてくれる、そういうメッセージをここの照明は伝えていたのではないでしょうか。この友情の永遠性はThank you, FRIENDS!!の歌詞にもEternal Friendsという文言に表れていますね。

 

こうしてライトが交点を結び、それが時間軸の中を進んでいく様はまさにAqoursが歩んできた軌跡とAqoursメンバーの関わりを表しており、それは千歌ちゃんがWonderful Storiesの中で「かがやき」と呼んだものでした。

 

ライトの方の話がかなり熱くなってしまいましたが、今度はふちどりライトのほうを見ていきましょう。

曲の前半ではふちどりライトは白い色をしているだけでした。しかし曲の2番がおわったあたり(少しうろ覚えです)から虹色にその色を変えます。ラブライブサンシャインの物語における虹と言えば、2期3話で予選会場から学校へ走るときに千歌ちゃんが「奇跡は起こるよ、だって虹かかかったから!」と言ったセリフが浮かびますね。では奇跡とはなんだったのかと考えた時真っ先に私に浮かんだのは1期1話で千歌ちゃんが梨子ちゃんに対して放った「奇跡だよ!」でした。ここからふちどりライトにおける虹色は出会いを象徴しているのではないかと考えました。

 

以上の2つを合わせるとライトは出会い、共に歩み、別れるけれども共に歩んだ時間(すなわちつながり)は過去になっても永遠に残る点を示し、ふちどりライトの虹色は出会いが奇跡であることを示しているので、この曲における照明演出のメッセージは「出会いは奇跡、歩んだ時間は輝きで、共に過ごした時間は別れの後も永遠にみんなを繋いでくれる」とまとめることができると思います。このメッセージはまさに先述した4thライブのテーマ2つめの前半「1期2期を俯瞰して」の部分に合致していると考えられます。

 

ここまでまとめることができたので、劇場版への橋渡しの部分を次は考えていくとしましょう。

 

3. 劇場版の内容と照明演出の関わり

Thank you, FRIENDS!!の曲中での照明演出については上に示した通りで付け加える点はありません。しかしライトの演出では3年生が卒業し、2年生と1年生が続いたあとの未来まで描いていると書きました。しかしアニメでは3年生の卒業というテーマはほとんど描かれておらず、照明演出が観客の知識を超えてしまっているように感じられます。しかしThank you, FRIENDS!!はアンコールで披露された曲で、私たち観客はすでに劇場版の内容について一部お知らせのコーナーで触れていました。PVでは3年生の卒業を前にAqoursメンバーそれぞれが動いていく様を描き出す旨の告知がなされていました。アニメで扱われなかった卒業というテーマは劇場版で取り扱われるんですね!そして卒業というイベントは必ず別離を含み、今まで浦の星女学院という一つの場所に集まっていたAqoursの関係性に変化をもたらすことでしょう。共に歩む時間が過去になる時、共に歩んだ時間という輝きという考えはどのようになるのか?この問いに対する解答の可能性の一つが照明演出には隠れているのかもしれません(これは希望的観測ですね笑)。

 

少し話がずれてしまいましたが、映画のテーマに卒業があることを考えると、4thライブのテーマソングであるThank you, FRIENDS!!の照明演出がメンバーの卒業まで視野に入れていることは頷けるでしょう。このように「アニメ1期2期での内容を整理した上で劇場版への橋渡しをする」という4thライブのもう一つのテーマをかんがえるとThank you, FRIENDS!!の照明演出はまさにこのテーマを体現したような演出だったのかなとおもいます。

 

4. おわりに

ここまで長いことお付き合いいただき誠にありがとうございました。初めての記事ということもあり読みにくかったところもあるかと思います。

 

照明の役割というのはあくまでパフォーマンスをサポートすることが主ですので上に書いたようなことがいつでも起きているわけではありません。私は照明の役割を(1)演者の周りを照らしてパフォーマンスを助けること、(2)特定の場所に光を当てて観客の注意を引くこと、(3)耳で聴くものである音楽にたいして視覚的な演出を通して表現を豊かにすること、(4)特定のテーマを照明装置を使って表現することだと考えています。主な役割は1~3で、今回のような記事を書けることは珍しいですが、1~3役割を照明さんがしているということ、その演出にライブ中に少し注意を割いていただければ、「みんなで叶える物語」としてのライブがより豊かになるかなと思っています。

 

今回の記事を読んで照明演出を見てくれる方が増えれば嬉しいです。

 

それでは最後に照明さんへの感謝の言葉で締めたいと思います。

 

照明さん、素晴らしい演出をありがとう!!!!!!!!!